本日は垂直統合:川下への進出に関して記載します。
【垂直統合、川下への進出とは】
まず、垂直統合とは、自社の仕入先、または販売先とのM&Aやアライアンスを行うことで、事業領域の拡張を図ることを言います。そして、この垂直統合には川上統合と川下統合があります。まず、自社事業領域の川上側へ進出していくことを川上統合と言い、これは原材料の調達強化などを狙ったものです。そして、自社事業領域の川下側へ進出していくことを川下統合と言い、販売機能・市場管理の強化などを狙ったものとなります。
川下への進出している例として食品・雑貨を扱う住友商事が挙げられます。調剤機能を持った地域密着型の「トモズ」というドラッグストアがあるのですが、同店舗は住友商事の100%子会社である住商ドラッグストアーズの店舗ブランドの一つとなります。また、住友商事はスーパーマーケットチェーンのサミットも所有しており、川下への進出を果たしています。
このように川下へ進出する川下統合は、産業バリューチェーンの川下側を買収統合するものとなり、これにより川下側での売上拡大が図れ、粗利を深くすることができるビジネスモデルとなります。
【川下へ進出することのメリット・デメリット】
まず、垂直統合を行うことによるメリット・デメリットは以下のようになります。まず、メリットとしては、上流・下流の関係にある事業間の交渉コストや営業コスト、購買コストを下げることができるとともに、サプライチェーンを適正化することによって物流費を削減することができます。その一方でデメリットとして、最良の取引相手を選択する機会がなくなる、もしくは減少してしまいます。また、水平統合と違い、扱う製品の量を増やせるわけではないため、生産面などで規模の経済が利きにくいということが挙げられます。そのため、水平統合と異なり、一般的に、単純に垂直統合を行うだけでは価値が出せないと言います。
その中にあって、川下へ進出していく際に、競合他社からも仕入れている川下企業を買収することは、川上側の競合相手を駆逐し、自社で川下企業の需要を独占することにつながり、川上側の売上増という結果につながります。このことは企業の買収価格の一部を川上側の売上増加の粗利で賄え、実質的に買収価格を小さくすることにつながります。
産業バリューチェーンの上流と下流では、企業文化が異なっていることが多く、これが川下進出の障害となる可能性があります。一方が他方を支配するような買収を行ってしまうと、退職などによる組織効率の低下を招いてしまう可能性が出てきてしまいます。
川下側への統合は競合を排除できるという点で、市場が成熟している場合、有効なビジネスモデルだと言えそうです。
(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)