クール・ジャパン

本日はクール・ジャパンに関して記載します。

【クール・ジャパンとその戦略の背景】

クール・ジャパンとは、日本の文化的なソフトの面が国際的に評価されている現象のことを言います。また文化的なソフトの面でのコンテンツ自体や、日本政府が対外文化宣伝・輸出政策で使用している用語でもあります。ここでは日本政府が行っている対外文化宣伝・輸出政策に関して記載していきます。

このクール・ジャパンが行われる背景として経済的な事情があります。日本の名目GDPは2008年から2011年の3年間で55兆円減少しており、今後も少子高齢化により生産年齢人口が減少することが予測されますので、それに伴い潜在成長力も低下していくことが想定されます。また、昨今の海外生産による貿易収支の赤字に見られるように、過去急速に円高が進んだことにより、海外生産シフトが進んでいます。この海外生産へのシフトは国内の雇用に影響します。例えば国内の自動車産業が空洞化した場合、60万人程度の雇用が減少する恐れがあると言います。

日本には欧米やアジアで人気な、アニメや漫画、食文化、宅配便、旅館、伝統工芸品など、人気の高い商品・サービスが数多くあります。こうしたクール・ジャパンの人気を活かして「内需掘り起し」「外需取り込み」「産業構造転換」を行い、新たな収入源、中小企業の活路、若者の雇用の確保、地域経済の活性化につなげていこうとしているわけです。

【クール・ジャパンによる成長戦略】

クール・ジャパンを支えているのは、クリエイティブ産業です。

(クリエイティブ産業の例示業種:広告、建築、美術・骨董品、工芸、デザイン、ファッション、映画・ビデオ、TV・ゲーム、音楽、舞台芸術、出版、コンピュータソフトウェア・サービス、テレビ・ラジオ、家具、食器、ジュエリー、文具、食品、観光)

日本のファッションや食、コンテンツは海外で高い人気を誇っていますが、それによって儲かっているかというとそうでもないようです。中国ではVIVIなどの日本発のファッション雑誌が人気ですが、繊維産業の輸出量は485百万ドル(韓国2,183百万ドル、フランス9,166百万ドル、イタリア20,049百万ドル)(出典:繊維ハンドブック2009)と低い数字となっていますし、全米には日本食と称するレストランは約9000店あるけれども日系オーナー店舗は10%以下だと言います。

このような状況において、世界の文化産業全体の市場規模は2020年時点推計値で900兆円以上になることが見込まれていますが、そのうち日本は8~11兆円の獲得を目指していきます。

【クリエイティブ産業の活性化による海外での成功事例】

クリエイティブ産業を活性化することにより先んじて成功している国があります。

イギリスは1997年にトニー・ブレア元首相が「クール・ブリタニア」を掲げ、クリエイティブ産業を成長させています(クリエイティブ産業の粗付加価値額1.8倍 1997年6300億円、2006年1兆1460億円。クリエイティブ産業の輸出額1.7倍 2000年1900億円、2006年3200億円。クリエイティブ産業の事業所数1.4倍 1997年112,900所、2008年157,400所。)

韓国では1997年、キム・デジュン大統領の「文化大統領宣言」以後、官民一体となったCool Korea戦略を採っています。韓流などの動きを思い出すとこの戦略も一定の成果を上げていると言えます。

【クール・ジャパン戦略 アウトバウンドとインバウンドのスパイラル】

クール・ジャパン戦略によって、ファッション、アニメ、食文化、地域産品・匠の技といった担い手である職人、クリエイター、中小企業を世界市場へ結びつけ、新たな輸出商品としていきます(アウトバウンド)。この際、当初からコンテンツ(映画、音楽などのCD/DVDの収入、テレビ番組の放映料、ライブ/興行収入)の輸出で収益を上げるだけでなく、二次利用(キャラクター商品のライセンス料、ファッション、美容、食などの文化派生商品の売上増)やスポンサー企業のプロモーション(CM出演などのプロモーション料、消費財など「Made in Japan」製品の売上増)によっても収益を上げていくことを目論んでいます。また、インフラ整備として、現地で日本のコンテンツが常に視聴され、「Made in Japan」ブランドの人気が維持されるよう、コンテンツの継続的な放送・配信等の場(プラットフォーム)を確保するように取り組みを行っています。これらにより「本物」「本場」を求め観光客やクリエイターが日本へ来訪することとなります(インバウンド:外国人旅行者を自国へ誘致する)。

アウトバウンドによって日本に憧れを持った人々が日本を聖地とし日本でしか体験できないコトを求めて訪れてきます。クール・ジャパンはインバウンド戦略として海外需要を日本国内へ呼び込む効果をもたらします。

日本の国内市場がこのままの流れでは縮小されることが想定される中、クール・ジャパンの動きは日本の経済力を保つための重要な施策の一つと言えそうです。一方で、クール・ジャパンを継続的に成功させ続けるためには、日本国内における「モノづくり」や「商品・サービスの提案力」を強化し続けることが重要なように感じます。

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