本日は日本の起業の状況に関して記載します。
【諸外国と比較した日本の起業の状況】
起業が行われるということは、産業構造に新陳代謝が行われるということとなり、起業した新たな企業が経済成長を牽引し、雇用を生み出していくということにつながります。また起業により社会に多様性が生み出されることになります。このように経済成長にプラスの要因をもたらす起業ですが、日本においては国際的にみてその活動は低調なものとなっています。各国の起業活動率を見てみると、最もその数値が高い国がアイスランドで10.6%となっています。アイスランドに次いで企業活動率が高いのがオーストラリアで7.8%。世界経済を牽引するアメリカで7.6%。お隣の韓国は6.6%。ドイツで4.2%。そして日本は3.3%、とその数値は低いです。それだけ日本においては起業が行われにくい環境になっていると言えると思われます。
(※起業活動率:18歳から64歳までの人口に占める、企業活動を行っている者(起業準備中の個人及び起業後3年半以内の会社を所有している経営者)の割合データ。)
【日本での起業の現状】
日本においては1980年代後半から開業率が廃業率を下回る状況が続いていると言います。これはバブル崩壊以降に長く続いた不景気の影響だと思われます。しかしながら、このように開業率が廃業率を下回る状況が続いている中で、情報通信業や医療・福祉においては開業率が廃業率を上回っています(2004年~2006年)。この点、ITや高齢化など時代の流れを感じさせるものがあります。
起業と一本で言ってもそれを行う人には男性も女性もいるわけですが、その性別によって起業する分野が違うという特徴があります。男性よりも女性が起業する割合が高いのは、小売業、飲食店・宿泊業、教育・学習支援業、洗濯・理容・美容・浴場業、生活関連サービス業となっています。2007年には女性の起業家が約3割を占めていました。
さて続いて、起業者数を年齢層で見てみると、男性が60歳代、30歳代、女性が30歳代、65歳以上の割合が高くなっています。2007年では60歳以上の起業家は約3割を占めていて、近年の起業家に占める60歳以上の割合が増加してきています(60歳以上の起業家の推移:1979年6.6%→1992年14.2%→2007年26.9%)。少子高齢化が起業家の数にも影響してきているということでしょうか。
【起業の段階における課題】
本業の製品・商品・サービスによる売上がない段階(萌芽期)において、「資金調達」「起業・事業運営に伴う各種手続」「経営に関する知識・ノウハウ」が起業・事業運営上の課題とする起業家の割合が高くなっています。「資金調達」の課題に関しては、萌芽期における資金調達先として、預貯金や副業収入を含む自己資金と回答する企業が9割に上がっています。起業をする際には自身の先立つものが必要となってくるということです。株式会社日本政策金融公庫総合研究所が行っている「新規事業実態調査」から、開業時に準備した自己資金額を見ると、中央値が230万円となっている一方で、2011年度の開業費用の中央値は620万円となっています(なお、開業費用の中央値は年々低下傾向にあります。1991年中央値970万円→2011年度620万円)。自己資金以外での調達を必要とする起業家が多く存在するということです。
続いて成長初期(売上が計上されているが、営業利益が黒字化していない段階)の段階になると、「質の高い人材の確保」「販路開拓・マーケティング」「製品・商品・サービスの高付加価値化」を課題とする起業家の割合が上昇します。資金調達とともに人材の確保が課題となってくるのです。特に「経営者を補佐する人材」が求められてきます。
そして安定・拡大期(売上が計上され、少なくとも一期は営業利益が黒字化した段階)では資金調達を課題とする起業家の割合は低下し「新たな製品・商品・サービスの開発」が上昇してきます。この時期になると起業家は、事業の安定化のために既存の製品・商品・サービスに頼るだけでなく、新たな製品・商品・サービスの開発により、新たな市場を開拓する必要があると考えるようになるのです。
日本の起業に関してニュースなどで報道されることがあります。現状、日本の起業活動率が低いことを踏まえると、まだのびしろがあるでしょうし、今後、起業する人が増えてくるのかもしれません。