行動経済学から見る単品通販の無料お試しセット

本日は行動経済学から見る単品通販の無料お試しセットに関して記載します。

【単品通販の戦略】

通信広告を見て消費者が商品を申し込む確率は0.2%~0.02%程度だと言います。そのような中で単品通販を行う業者が重視しているのは、市場シェアを拡大することではなく顧客数を増やすことです。

単品通販とは、ひとつの商品やひとつのカテゴリーに絞りこみ、顧客の欲する情報量を増やし、コミュニケーションを重視した販売方法となります。例としてはやずやの「香酢」「にんにく卵黄」や山田養蜂場の「ローヤルゼリー」「プロポリス」があり、リピート性の高い商材が向いています。

単品通販は利益を得るために『新規顧客を獲得する→新規顧客の獲得コストを下げる→獲得した顧客に継続購入を促す→その顧客の客単価や購入回数をアップさせる』というプロセスを採って行きます。商品の単価にもよりますが、初めの数回の購入では利益が出ないことは織り込み済みです。数回以上、商品を買ってもらって初めて利益が出るビジネススタイルとなっているのです。

これら通販企業が無料のお試しセットを出していることがあります。これは新規顧客獲得と合わせ、2回目以降も自社の販売する商品を購入してもらおうという意図を込めているのですが、消費者にとって『無料』ということが非常に魅力的に映ります。無料であるということは低価格であるという以上に消費者に魅力を与えます。通販企業は『無料』の魅力で大量の見込み客リストを集め、活用しています。

【無料の魅力 行動経済学『プロスペクト理論の確率加重関数』】

無料のお試しセットの「損をする確率がゼロである」ということは消費者から非常に強いメリットとして認識されます。そのことに関して以下のような実証結果があります。

■チョコレートを買う人の心理の実験

15セントの高級なトリュフチョコと、1セントのポピュラーなキスチョコを並べてどちらか一つだけ、買えるものとしました。その結果、73%が高級チョコで、残り27%がキスチョコを選びました。

次にそれぞれ1セントずつ値下げし、高級チョコを14セント、キスチョコを無料で提供したところ、結果は逆転。69%がキスチョコを選び、高級チョコは31%にとどまる結果となりました。

人間の心理において、無料で得られるとなると、それが実際よりも価値のあるものに見えるのです。

上記の例以外にアマゾンの無料配送キャンペーンの事例もあります。アマゾンは一定額以上の注文をすると配送料が無料になるキャンペーンを実施し、ついで買いを誘うことで、世界的に業績がアップしました。しかしながら、フランスにおいてのみ業績アップにならなかったと言います。これは、フランスでは一定額以上の注文で配送料を1フランにしたためだと言います。1フランであっても無料との差は、実際以上に大きく消費者に感じさせるということです。

行動経済学の中のプロスペクト理論に確率加重関数という理論があります。これは人間が判断する際の癖で、確率が小さい時は過大評価され、確率が中くらい以上に大きくなると過小評価される傾向があることを言います。また、確率が0%や100%などの極端な数値の近辺では反応が強くなります。

人間は確実に起きることを重視します。確実に得られるメリットには強い魅力を感じる一方で、非常に高い確率で得られるメリットであっても、それが100%確実に得られるものでなければ、魅力は下がるのです。

無料であるということは思った以上に消費者に魅力的に映るようです。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

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