T2O2O(O2O2O)に関して

本日はT2O2O(O2O2O)に関して記載します。

【T2O2O(O2O2O)】

2013年6月、国内最大手の『電通』とネットベンチャー企業『スポットライト社』が業務提携を発表しました。

スッポトライト社(2013年10月に楽天の傘下に入る)は、消費者が参加企業のリアル店舗に“来店するだけでポイントが貯まる”スマートフォンアプリ「スマポ」を提供する企業で、O2O黎明期の2011年からこの市場に参入し、実績を積み上げてきました(スマポ会員数:数十万人(2013年10月時点))。スマポ参加企業は大丸百貨店、ビックカメラ、ユナイテッドアローズなど約700店舗。店内で消費者がスマホアプリを立ち上げると、店内に発生している超音波を拾いポイントが貯まっていく仕組みです。

さて、電通とスポットライト社は業務提携をすることによって、マスメディアとO2Oの価値を高めていくことを狙っています。内容としてはテレビCMが流れている時、消費者がスマポを立ち上げると、CMから発信される人には聞こえない音声信号を拾い、ポイントが付くようにするというものです。テレビCMを見た人が興味を持って売場に行くと、さらにスマポのポイントが付きます。もし、来店前に商品に興味を持ってウェブページにアクセスするとそこでもポイントがもらえる仕組みになっています。ポイントは店舗の商品券などと交換できます。

このようなテレビCMや番組からオンライン(ネット)を経由して、オフライン(リアル店舗)へ消費者を誘導する手法を“T2O2O(テレビ・ツー・オンライン・ツー・オフライン)”もしくは“O2O2O(オンエアー・ツー・オンライン・ツー・オフライン)と称され、注目され始めていると言います。

この仕組みは整っていて、現在、CMのクライアント企業数社と相談している段階だと言います。

【T2O2Oのメリット】

今までは「テレビCMを見た人が来店したか」ということや「商品を購入したか」ということを測定できませんが、T2O2Oによってそれが測定可能になります。電通にとってはマス広告に大きな付加価値を付けられるというメリットを加えることができます。また、メーカーが小売店と交渉する際の新たなカードにもなるようです。今までメーカーがスーパーマーケットなどと棚のスペースの広さを交渉する際「テレビCMをたくさん打つので」というカードを切っていましたが、T2O2Oの仕組みを取り入れることにより、「当社の予算でスマポの仕組みを設置するので、店舗に売場を設けてほしい」と交渉できるようになります。スマポは超音波を発生する装置を設置することで、消費者が売場に来ればポイントや特典クーポンがもらえるので集客が見込めます。メーカー経費でスマポの装置が設置できれば、小売業側としてもメリットがあるので検討する余地が出てくると思われます。

今まで、テレビCMはザッピングして飛ばしてしまうことも多々ありましたが、T2O2Oが一般化したら、興味を持ってテレビCMを観るということが出てくるようにも思われます。技術の進歩によりネットとリアルの境界線は今後益々なくなっていくのかもしれません。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

コカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」

本日はコカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」に関して記載します。

【成功を収めたO2Oキャンペーン「Share a Coke and a Song」】

「Share a Coke and a Song」とは2013年3~6月に日本コカ・コーラがソニーの定額制音楽サービスと提携し全国で展開したO2Oキャンペーンです。このキャンペーンは参加者140万人以上で、売上については具体的な数字は公表されていないものの前年同日と比べて2ケタ増になった日もあるそうで、大成功を収めたキャンペーンと言えます。

具体的な内容としては以下のようなものです。コカ・コーラやコカ・コーラゼロの限定ボトルのパッケージに“年”を表す“1957”~“2013”という4ケタの数字を記載。消費者は自分の好きな年のコカ・コーラを選んで購入。そして、パッケージに9ケタのシリアルコードが記載されているので、スマホを利用して専用サイトにアクセスし、それを入力します。そうすると、ボトルに記載された年にヒットした、国内外の人気アーティストの10曲分のプレイリストを全曲フルバージョンで聴くことが出来ます。

また、このキャンペーンではFacebookなどのソーシャルメディアで消費者が手に入れたプレイリストを共有できる仕組みも用意しました。そして、その投稿を見た人はプレイリストの各曲を30秒ずつ視聴できるようにしていました。このように「Share a Coke and a Song」のキャンペーンはバイラルで情報が拡散するようにも工夫が凝らされていたのです。

【ブランディングを重視したO2O「Share a Coke and a Song」】

この「Share a Coke and a Song」では消費者にテレビCMや屋外広告、イベント、店頭などでのキャンペーンを通じて認知してもらいました。店頭で消費者が記載されている4ケタの数字を見て“年”を表していると理解してもらう必要があるためです。例えば渋谷と福岡では、街中に巨大なコカ・コーラ型スピーカーを登場させ、音楽を流すと言うプロモーションイベントを実施しました。参加者が巨大ボトルの横に設置された端末から4ケタの“年”を入力すると、巨大ボトルのラベルに入力した数字が表れ、その年のヒット曲が街中に流れるというイベントです。このようにコカ・コーラは「Share a Coke and a Song」を消費者に認知してもらうために、ネットとリアルを活用し、様々な角度から消費者にコカ・コーラの関心度を高めてもらえるように工夫を凝らしました。

「Share a Coke and a Song」は、音楽をきっかけとして消費者にとって思い出のある時代を思い出してもらう「思い出のそばに、コカ・コーラと歌がある」というコンセプトの下実施されました。日本コカ・コーラがO2Oで最重要視していることはブランド体験だと言います。同社はこのO2Oキャンペーンにより、消費者の体験がコカ・コーラのブランド価値を高め、ファンの育成につなげていこうと試みたのです。

今キャンペーンではO2Oが数多くあるメディアの一つとして活用されたと言えます。商品と消費者の結びつきを強めることによって、最終的な目的である売上増にも結び付けたのです。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

東急ハンズのO2O

本日は東急ハンズのO2Oに関して記載します。

【店頭在庫状況がネットでわかる東急ハンズ】

2012年12月26日、東急ハンズはネットストアを大幅にリニューアルしました。その際に、ネットストアの在庫状況だけでなく、リアル店舗の在庫状況も確認可能にしました。消費者が自分の欲しい商品をクリックすると、商品の詳細情報、店舗での販売ランキング、店頭在庫情報の画面が出てきます。更に店頭在庫状況で「店舗を全て表示」をクリックすると各店の在庫数が一覧で確認できます。商品はもちろんネットで買うこともできますし、店頭で受け取ることもできます。

この在庫状況の情報は15分に一度更新されているため、消費者にとってかなり参考になる情報です。全国の店舗で売れた商品を、即時に表示する機能もあります。消費者は電話もかけることなく家でリアル店舗の情報をリアルタイムで知ることが出来るのです。

【お得感に頼らないO2O】

今主流となっているO2Oはクーポンなどにより「お得感」を顧客に打ち出すものが多いのですが、東急ハンズは消費者の商品に対する「課題解決」や「わくわく感」を喚起するようなO2Oを実施しています。

そもそも東急ハンズでは、クーポン施策は顧客に有効ではないそうで、ほとんど実施されていないそうです。値引き販売は自店舗の利益を減らすことになりますから、値引きに頼らない販売は東急ハンズの強みと言えると思います。もともと東急ハンズはDIY用の材料や工具、ユニークな生活雑貨など、興味をそそられるような商品が数多くあります。お店に行くと面白い商品との出会いが期待できるという強みがありますので、値引きにより顧客を囲い込もうとする行為は必要ないのかもしれません。

東急ハンズはO2Oの基本戦略として「ネットとリアルのシームレス化(シームレス:利用者が複数のサービスを違和感なく統合して利用できること)」を掲げています。リアル店舗の商品在庫の情報公開はこの考え方から登場しました。それに加え店舗での販売ランキングなどのリアルタイムでの情報公開は楽しさも演出してくれます。東急ハンズのO2Oは値引きに頼らない、自社の強みを活かす戦略と言えそうです。

O2Oを進めていく中で、組織を横串で刺して取り組みを進めていく必要が出てきますが、多くの小売業では縦割り組織が多く、それが壁になってしまっていることが多いそうです。東急ハンズでも同様の問題があったといいます。今後、リアル店舗がネットを有効活用していく上で、組織全体の協働体制が重要になってくるのかもしれません。

(参考文献:O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

ノンフリル実践企業例

本日はノンフリル実践企業例に関して記載します。

【ノンフリルを実践する企業】

ノンフリルとは、余剰サービスを極力省き、コアのサービスだけを質を下げることなく、低価格で提供するビジネスモデルです。このビジネスモデルの代表例として挙げられるものとしてLCC(ローコストキャリア)があります。また他の事例として『QBハウス』『スーパーホテ』『IKEA』の取り組みも挙げることができます。上記、4つの企業に関して以下にそれぞれ取り組み内容を記載していきます。

【LCC】

LCCの元祖は1967年に創業したサウスウエスト航空です。共同創業者のハーバード・ケレハーらが「高額な航空運賃を安くできないか」と、必要性の低いサービスを省きました。その後、アイルランドのライアンエアー、オーストラリアのジェットスター、マレーシアのエア・アジアなど世界各地でLCCが誕生していきます。各社は「座席の幅を従来よりも狭くする」「食事や飲み物の提供・機内サービスの有料化」「手荷物預かりの有料化」「不便な郊外の空港を発着地に選ぶ」といったことを実践しコアのサービス以外でかかっているコストを削減。航空券を安くすることに成功し、低価格指向の顧客の心を掴むことに成功します。

【QBハウス】

QBハウスと言えば、10分1000円のヘアカット専門店。創業者の小西國義氏が「散発の時間をもっと短くしたい」と考えて生み出されました。一般的な理美容室では“カット”“シャンプー”“マッサージ”“ブロー”“セット”が一連のサービスとして行われますが、QBハウスは“カット”のみを行い、それ以外のサービスは切り捨てました。短時間でカットすると質が劣るのではとも考えてしまいますが、一般的な理美容室でもカット時間は10~15分だそうです。また、QBハウスは事前の予約や理美容師の指名もなくし、レジ作業の効率化を図ります。このような取り組みにより顧客から支持を受け、1号店オープンの1996年から20年足らずで、国内に500店舗を構えるほどの成長を遂げることができています。

【スーパーホテル】

スーパーホテルは「ぐっすり眠れる」というコンセプトして成長している企業です。1989年創業以来売上は右肩上がり、店舗数は全国100店舗を超えています。同社は「ノーキー・ノーチェックアウト・システム」を採っています。このシステムは、まず宿泊者はチェックインの際に部屋番号と暗証番号がプリントされた領収書を受け取ります。そして宿泊者はそこに記載されている暗証番号を部屋の扉に設置されているボタンに押すと鍵が開きます。これにより同社はチェックアウト時の顧客対応を省くことができました。また、部屋に電話を置いていないため、問い合わせによるスタッフ対応の手間も省きました。このように、スーパーホテルは宿泊者の安眠に注力し他のサービスを省くことで顧客からの支持を得ています。同社の宿泊代は、平均1泊7000円程度のビジネスホテル業界で、一泊・朝食付き4980円という価格設定に成功しています。

【IKEA】

IKEAで買い物をする際には、“気に入った商品を見つけたら番号をメモし倉庫に行く”→“家具の番号を見ながら倉庫で自分の家具を探す”→“家具を見つけたら、カートに積みレジまで運ぶ”→“会計を終えたら車まで自分で家具を運ぶ”→“家で自ら家具を組み立てる”という流れになります。日本の開梱設置まで行うシステムとは随分違います。この仕組みによりIKEAは「商品を倉庫からレジまで運ぶ要員」「配送費」「組み立てを行う要員」を削減。商品の低価格での販売につなげることに成功しています。(同社は80年代に一度日本に上陸しましたが、上記システムが日本人に受け入れられずに撤退しています。再上陸は2006年になるのですが、その際には有料での宅配サービスや組み立てサービスも組み込んでの上陸となります。)

消費者が必要とするサービスを絞り込み提供する“ノンフリル”というビジネスモデルは、長引いたデフレに慣れた日本の消費者に支持を受けているのではないかと思われます。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

アメリカの予算教書

本日はアメリカの予算教書に関して記載します。

【世界経済に影響を与えるアメリカの予算教書】

3月4日にオバマ大統領が予算教書を提出しました。この予算教書とはアメリカの大統領が連邦議会に対して提出する、翌会計年度の予算案の編成方針を示す文書のことです。アメリカの会計年度は10月~翌年9月となっていて、本教書は毎年2月ごろに提出されています。日本においては総理大臣が中心となって予算案を作成しますが、アメリカの場合は予算を決定する権利が大統領にはなく連邦議会に所属する形となっています。その点、日本とアメリカで予算の組み立てられ方が違うと言うことになります。

予算教書は大統領が必要と思う政策や歳入・歳出の見積もりを議会に示し、それに沿った予算編成を議会に促す「勧告」の性格が強いものです。そして、議会は予算教書を受けて予算関連法案の作成にかかり、大枠を決める予算決議を採択し、個別の歳出法案や歳入法案を審議します。なお、大統領には議会が可決した予算関連法案に対して拒否権があるため、本教書の内容に特に問題がない限り、概ね反映されると言われています。

日本では予算教書はあまりなじみのないものとなっています。しかしながら予算教書は中長期的にアメリカの経済や財政がどのようになっていくかをマクロ的な枠組みで示す役割を担っていて、世界経済に与える影響が極めて大きいため、世界中の注目を集めるものとなっています。

【2015会計年度(2014年10月~15年9月)の予算教書】

3月4日に提出された予算教書は、高額所得者や企業に対する新税、教育、研究開発、低所得層向けの政策への支出計画が盛り込まれたものとなっています。

さて、今回の予算教書を受けて、多くの人が失望する結果となっているという声があるようです。その理由としては歳出の拡大にあります。今回の歳出総額は14年度と比べて約3500億ドル増加の3.9兆ドル。このことが財政赤字削減への努力がなされていないと判断されているようです。なお、この歳出総額の増加分の大半は社会保障支出や高齢者医療保険、低所得者向け医療保険の支出に充てられます。

かといって財政赤字を減らす努力をしていないわけではなく、削減に向けた道筋は立てているようです。15年度の財政赤字は5640億ドルで対GDP比3.1%と見通しですが、その後、税収増を主因として18年度までに財政赤字は減り続け、同年度のGDP比は1.9%まで低下すると予想しています。なお、税収増に関しては、今後10年で約1兆ドルの新税を提案していて、その大半は不動産や高額所得者への増税となっています。

【注視すべきアメリカ経済】

現在、FRBの金融緩和が続いてきた効果により、2009年1月に8000ドルだったNYダウ平均株価は、現在16000ドルを超す水準になっています。このことからアメリカの株価は近いうちに調整局面に入るのではないかという声もあるようです。調整局面に入れば日本の株価や為替に影響してくることは必至です。世界経済1位のアメリカの経済の行方は日本経済に大きく影響していきますので、しっかりとみておくことが必要なのでしょう。

(参考資料 エコノインサイト iFinance)

ロングテールを実践するリアル店舗

本日はロングテールを実践するリアル店舗に関して記載します。

【ロングテールに関して】

従来、小売店では店舗面積や在庫コストなどの物理的な条件があるため、一部の人気商品が売上のほとんどを占める形になります。そのため、効率よく売れ筋商品を販売するためにPOSに頼った仕入れが行われるわけです。一方で、近年、アマゾンもビジネスモデルとして実践している“ロングテール”が注目を集めています。ロングテールとは売れ筋商品の売上数量はダントツに大きいけれども、死に筋商品は恐竜の長い尻尾のようにその売上数量が少なくなることを踏まえ、売れ筋商品だけでなく、死に筋商品も数多く揃え「何でも揃う場」を創造し、その結果、幅広い顧客層を獲得して、安定的な売上を得る手法です。このロングテールは店舗面積という物理的な制約がないeコマースの世界で成立することが一般的です。しかしながら、リアル店舗においてもこのロングテールのビジネスモデルを採っている企業もあります。

【ロングテール実践企業例】

■東急ハンズ

1976年に設立された東急不動産傘下の市街地立地型のホームセンターです。東急ハンズはDIYなどに適した資材や部材を中心にした多彩な品揃えで有名です。数多くのユニークな商品もそろっているので楽しく買い物ができる店です。豊富な商品を取り扱っているにもかかわらず、驚くべきことに、仕入れを行うにあたってPOSに頼っていないそうです。現場に裁量を持たせて「これはお客様に喜ばれる」「こういった商品がないかと問い合わせがあった」等の売場で拾い上げた情報を基にした仕入れを奨励しているのです。このことから同社は元祖ロングテールとも言われています。

■ハンズマン

ハンズマンは宮崎県に本社を持つホームセンターチェーンで、2013年3月現在、九州に11店舗展開しています。九州にしか店舗はないものの、「ズームイン!!SUPER」などの全国放送の番組で度々放送されていると言います。ハンズマンは1店舗あたり21万アイテムを品揃えしていて、1年に1個しか売れない商品が大半を占めているそうです。このような商品の多さが、ワンストップで購入したいプロや日曜大工などのユーザーの心を掴んでいると言います。また同社も東急ハンズと同様、POSを導入していません。1店舗当たり100名いる従業員が商品に接しながら、顧客の要望を反映した品揃えができるよう取り組んでいます。

■ダイシン百貨店

東京都大田区山王にある百貨店。近所に数シニア層の心を掴むため、売れ筋商品だけでなく死に筋商品も数多く取り揃え、取扱品目は約18万点に達します。「ポマード」「粉歯磨」「チリ紙」「ちりとり」「ハタキ」など、ここにしかない商品を取り揃え、近隣に住む良質なリピーターを集めることに成功しました。

ロングテールは消費者にワンストップショッピングの場を提供するためには重要な取り組みだと考えます。一方で店舗面積や在庫管理など物理的な条件を鑑みなければならないことも確かです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)

フリーミアム

本日はフリーミアムに関して記載します。

【無料ユーザーが9割以上を占めていても利益が出る“フリーミアム”とは】

フリーミアムという言葉を最近耳にすることがあります。このフリーミアムとは「フリー(無料)」と「プレミアム(割り増し)」を合わせた造語で、無料サービスを提供することでユーザー数を増やし、そのうちの一部のユーザーに高度な機能を持つ付加価値の高い有料サービスを購入してもらい利益を出すビジネスモデルのことを言います。無料のサービスという観点から言うと、昔から「無料サンプル」を配布するという手法もあります。しかしながら、フリーミアムは無料サンプルと“無料”という点では同じですが、双方には大きな違いがあります。それは無料ユーザーと有料ユーザーの比率が異なるということです。無料サンプルの場合、無料で商品を配布するにはコストがかかりますので、多くの商品を無料サンプルとして配布することが出来ません。一方でフリーミアムの場合、IT化によりコンテンツやサービスのコストを下げることが出来ているので、無料ユーザーがどれだけ増えたとしても、少数の有料ユーザーを獲得できれば利益を上げることが出来ます。フリーミアムを実践する企業は、たいてい1割に満たない有料ユーザーからの課金で利益を上げていると言います。

【フリーミアムを実践している企業例】

■エバーノート

エバーノートは無料で活用できるネット上のスクラップブックのようなアプリケーションソフトです。テキスト、写真、音声、動画などを自分のアカウントにアップロードすれば、クラウドによって、どこのパソコンやスマホからでもアクセスして利用・編集・共有ができます。エバーノートのユーザー数は5000万人以上いるそうですが、無料版と有料のプレミアム版のユーザー比率は96対4程度だそうです。クラウドを活用することでランニングコストを低く抑え利益を生み出しています。個人的にはちょっとしたメモをとる時に便利だと思っています。

■ドロップボックス

パソコンのフォルダをクラウド上に保存できます。無料版は容量が限られていますが、有料版にすると大幅に増量されます。iPhoneで撮った写真や動画がiPhoneをパソコンにつなぐと自動的にドロップボックスに保存されるので便利です。

■Avira

ドイツのAvira GmbHが販売するアンチウィルスソフトウェア。無料で利用できますが、起動するたびに有料版の広告が出ます。また一部機能が使えないなどの制限もあります。日本語版は2009年12月1日にリリースされ、1年で日本のユーザー数が250万人を突破しました。

■スカイプ

2003年に創業した無料電話サービス。インターネット回線を利用することで、パソコン(スマホ)の会話を無料にしています。有料サービスにすると固定電話への通話もかけ放題になります。

■Flickr(フリッカー)

画像投稿サイト。写真をウェブ上で整理・分類・展示できます。また、他人と共有してお互いにコメントを書き込むこともできます。有料版は広告表示がなくなります。

IT化が進むことにより、無料で多くの顧客を一気に集め、一部のコアの利用者へ課金をすることで利益を生み出すことが可能になりました。フリーミアムは社会環境の変化にともなって登場した新たなビジネスモデルと言えそうです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)

オープンビジネスモデル

本日はオープンビジネスモデルに関して記載します。

【オープンビジネスモデルとは】

オープンビジネスモデルとは、自社のみならず社外とのコラボレーションによって新しい価値を作り出し、これまで以上の利益を得るビジネスモデルのことを言います。近年、技術や製品のライフスタイルが短くなり、研究開発のスピードがより求められるようになっています。そこで自社の技術をオープンにして製品開発などをすることで、自社のみでやるよりずっと早く、斬新な技術開発を促すオープンビジネスモデルに注目が集まりました。

このオープンビジネスモデルを大きく分けると社内のアイデアや資産を社外のパートナーにオープンする「インサイドアウト」と外部のアイデアを社内に取り込む「アウトサイドイン」という二つの種類があります。

【ゴアテックスのインサイドアウト】

ゴアテックス(GORE-TEX)はアメリカのゴア社が開発した防風・防水性と透湿性を両立させた(水蒸気は通すけれど雨は通さない)画期的な繊維素材です。部品メーカーや素材メーカーはエンドユーザーにブランドの価値を見出してもらうことが難しい業種なのですが、ゴア社はゴアテックスの良さを伝えることが、良い素材を求めているエンドユーザーに対して大きなメリットとなると考えました。また、付加価値の高い製品づくりを目指す製品メーカーにとってもゴアテックスの良さを知ってもらうことは大きなメリットがあると考えました。そこでゴア社はインサイドアウトのビジネスモデルを活用します。同社は限定した生地メーカーやアパレルメーカーに対してのみ製品を提供するとともに、彼らと高い防水性や透湿性の製品を作り上げるために協働しました。この結果、ゴアテックス素材の「防水性・透湿性」はより磨きがかかっていくこととなりました。

【プリングルズのアウトサイドイン】

P&Gのポテトチップスにプリングルズという人気商品があります(P&Gが食品事業撤退により、2012年以降はケロッグが商標権を所有)。アメリカにはプリングルズ1枚ずつにスポーツや音楽などに関するクイズや豆知識などを印刷した「プリングルズ・プリンツ」という商品があります。この商品はパーティーで盛り上がるという新しい価値を消費者に届けることで大ヒット商品になったそうです。この商品はP&Gの社内の研究開発から生まれたのではなく、外部研究者とのやり取りから生まれたそうです(P&Gに当初ポテトチップスに絵や文章を印刷する技術がありませんでしたが、イタリアの大学教授が経営する小さなパン屋が食用のインクの技術を持っていることを知り製品改良を行いました)。まさしくアウトサイドインの手法を使って開発された商品ということが言えます。

自社と他社の情報の垣根をどう取り払って、どう自社の成長につなげていくか。情報を囲い込むのではなく、情報をどのように使っていくのかが企業の成長につながる時代になってきたのかもしれません。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

鴻海(こうかい)精密工業の“アンバンドリング”

本日は鴻海(こうかい)精密工業の“アンバンドリング”に関して記載します。

【成長する企業 鴻海精密工業】

フォックスコンの名前でも知られる鴻海精密工業は、台湾に本社を構え主な生産拠点を中国とする企業です。1974年の創業当時は小規模な企業でしたが、2011年にはグループの年間9兆7126億円の売上高に達し、その額は日立製作所や日産自動車の連結売上高を超える規模です。アップルのiPhone、ソニーのゲーム機やパソコン、モトローラ社の携帯電話など世界各地の大企業から高度な製品の生産を請け負っていて、各種パーツのOEM供給・筐体の組み立てを行っている老舗企業として世界規模の市場では名高い企業となっています(OEM:発注元企業のブランドで販売される製品を製造すること)。この鴻海精密工業の成長の理由には“アンバンドリング”というビジネスモデルにありました。

【アンバンドリングとは】

アンバンドリングとはビジネスの特色ごとにバリューチェーンを分け、特定の業務だけに特化するビジネスモデルを言います。ビジネスの特色は「顧客ビジネス」「インフラビジネス」「製品ビジネス」の3つに分けます。

・顧客ビジネス:顧客のニーズに即した商品やサービスを見つけて顧客に結び付ける。

・製品ビジネス:創造的な新製品やサービスを開発。

・インフラビジネス:物流、製造、取引処理など、毎日の業務を支える設備を管理する業務。

上記3つの仕事はそれぞれ求められるスキルや経済原理が異なりますので、一つの組織として活動していると、組織に矛盾が出たり、妥協が生まれたり、効率が悪くなったりします。そのことから、特色が違うビジネスは別会社にした方が、それぞれが強い企業になれるというわけです。例えば日本の電力会社を発電と送電部門を別会社にするということは、このアンバンドリングの考え方の一種となります。

【鴻海精密工業のアンバンドリング】

鴻海精密工業は自社の事業を上記の「インフラビジネス」に特化し、生産だけに経営資源を集中し、高度な製造ノウハウを蓄積していくことで、成長を遂げていきました。かつてはメーカーが自社で工場を持つのが普通のスタイルでしたが、近年、自社工場を持たず、企画と設計だけを手掛けるファブレスメーカーが増えています(例:任天堂・セガ・ダイドードリンコ等)。そうした企業は請負会社に対して、難解な設計や製造、並びに大量生産を求めてきます。それに対して鴻海精密工業はインフラビジネスに特化することにより、その期待に応えたのです。

企業の成長には強みを伸ばすことが一つの手段ですが、アンバンドリングはまさしくそのような手法であると思います。

さて、鴻海精密工業は3月10日に年内に1万5000人の新規採用を計画していて、新規採用者の配属先はクラウドやeコマースなどの次世代事業領域が含まれるという報道がなされました。同社は携帯端末市場の飽和により、その利幅が縮小していて、従来のビジネスモデルからの脱却を図ろうとしています。同社のこの選択が吉と出るか凶と出るか、注目されます。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

男性のいないフィットネスクラブ“カーブス”の戦略

本日は男性のいないフィットネスクラブ“カーブス”の戦略に関して記載します。

【フィットネスクラブ カーブス】

カーブスは1992年のアメリカテキサス州の一号店開業から10年程度で世界的な規模となったフィットネスチェーンです。日本では2005年10月から展開をスタートし、わずか8年間で1300店舗を達成しています。また会員数も58万人に上っています。店舗面積が40坪程度で、それほどスペースも取らない形なので、気づかなかったのですが、自宅の近所にもありました。意外と身近なフィットネスチェーンなのでしょう。

また、同社は50代以上の女性をメインターゲットにしていて、30分健康体操教室を行い効率性もアピールしています。

【カーブスの戦略】

カーブスは従来のフィットネスクラブから、ターゲット顧客である中高年女性が不要だと感じていた3つの要素“3つのM”を排除することによって成功しています。3つのMとは以下のようなものとなっています。

■Men:カーブスは女性専用のフィットネスになっています。顧客もスタッフも男性はいません。体型に自身のない女性や必死に運動している姿を男性に見られるのが恥ずかしい女性からの支持を受けることが出来ます。

■Mirror:鏡で自分の体型を見ると不愉快になる女性の気持ちを考え、鏡を設置していません。

■Make up:カーブスのトレーニングは器具を使って30分程度で終わります。激しい運動は行いません。ですので、シャワー室も必要ありませんし、化粧が落ちてしまうということもないようです。ちなみにフィットネスクラブによくあるプールもありません。

これら3つのMを取り除くことにより、運動不足は気になるが従来店には行きたくない中高年女性を取り込むことに成功したのです。中高年女性が無駄だと感じていたことを省き、コアのサービスに絞り込む“ノンフリル(装飾(フリル)がない)”な戦略をとったわけです。月会費も5900円~6900円と手ごろな価格となっています。

カーブスのビジネスモデルは店舗数を拡大するのにも役に立ちました。同社はシャワー室やプールがなく店舗面積も40坪程度と狭い場所を活用できるので、住宅街や商店街など主婦が通いやすい場所に多く出店することが出来たのです。

カーブスはまさしく、無駄を省きコアのサービスに特化することで成長した企業ということです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)