行動経済学の時間選好

本日は行動経済学の時間選好〈アメリカの牛乳の売上を回復させた「GOT MILK?」キャンペーン〉に関して記載します。

【「GOT MILK?」キャンペーン】

1993年に始まったアメリカのカリフォルニア牛乳協会による「GOT MILK?」キャンペーンという牛乳の愛飲促進キャンペーンがあります。このキャンペーンは15年間減り続けた1人あたりの牛乳消費量を回復させることに成功しました。

なお、「GOT MILK?」キャンペーンが始まる前に何も対策を打っていなかったというわけではありません。政府による健康促進キャンペーン「Milk Does a Body Good(ミルクは体にいいですよ)」という牛乳の飲用促進キャンペーンが行われていたのです。このキャンペーンの結果、93~94%の人が牛乳は栄養価が高いと認知し、90%の人が牛乳にはカルシウムが含まれていることを知り、その中の多数が牛乳のカルシウムで骨粗しょう症を予防できると理解するようになりました。それでも牛乳消費量は増えなかったのです。

しかしながら、「GOT MILK?」キャンペーンが始まったことにより、1994年の牛乳販売量は7.4億ガロンから7.55億ガロンへと上昇。牛乳消費量を回復することに成功したのです。

このキャンペーンのTVCMは10年以上続いていて多くのパターンがあり、その内容は、登場人物が甘いビスケットやケーキ、シリアルを食べていて、牛乳を飲もうとするとちょうどなくなっていたり、自販機が壊れていたりという内容です。あるCMでは飛行機を操縦しているパイロットが墜落のリスクを冒してまで機首を下げ牛乳の乗ったカートを自分のところまで近づけようとしたものの結局飲めない、というようなものとなっているそうです。

「Milk Does a Body Good」が将来の健康を消費者にアピールしていたのに対し、「GOT MILK?」は“今”飲みたいんだということを消費者にアピールする内容となっています。このことが牛乳消費量を回復させる結果につながったのです。

【行動経済学 時間選好に関して】

消費者の商品・サービスに対する価値の感じ方は常に一定ではありません。同じ商品・サービスでも価値の感じ方は変わります。その感じ方を大きく左右するものに「時間」という要素があります。「今を意識して買うのか」それとも「将来を意識して買うのか」その違いにより価値の感じ方が異なります。将来に消費するよりも現在に消費することを好む程度を「時間選好率」と言いますが、時間選好率が高いほど現在の消費を重視し、低いほど将来の消費を重視します。また、人間は間近の出来事に対しては「せっかち」になり、遠い先の出来事には「気長」になる傾向があります。例えば「今持っている1万円」と「1年後に手に入る1万円」では、今は手元にない1万円の方の価値の方が低くなります(将来の価値を現在の価値に換算する時、どのくらい割り引いて考えるかを表す率を「時間割引率」と言います)。この考え方を踏まえ「GOT MILK?」は将来の健康ではなく今飲みたいんだということへ立ち位置を変化させたのです。

上記のように行動経済学を踏まえたマーケティングの実施により売上を伸ばせるということが言えます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です