行動経済学〈ヒューリスティックス バナーブラインドネス〉

本日は行動経済学〈ヒューリスティックス バナーブラインドネス〉に関して記載します。

【ヒューリスティックスとは】

ヒューリスティックスとは、正確な情報が得られないと、直感もしくは限られた情報だけを頼りに判断する傾向があるという心理的なバイアスのことを言います。例えば、自動車事故で亡くなる確率と胃がんで亡くなる確率は後者の方が多いのですが、多くの人は交通事故の確率の方が高いと思っています。これは日ごろの報道で交通事故の方を多く目にしているため、交通事故の発生率を高く見積もってしまうためです。人はヒューリスティックスによって判断を誤ってしまうことが度々あるようです。

人間は大きな破局や災害が起こる可能性によって「恐怖」を感じる場合、そのリスクの起きる確率を高く見積もる傾向にあります。これもヒューリスティックスによる判断の誤りです。この心理をうまく利用している例として、“血圧を下げる”“肌を美しくする”といった健康を維持するための商品や、老化に伴うリスクに関する商品が挙げられます。自分に降りかかるリスク(健康が害される等)を人は高く見積もりますので、その結果、そのリスクを解消するかもしれない商品に関しては、検討したい、購入したいと考える傾向があります。

【バナー広告のようなものは見ない バナーブラインドネス】

バナーブラインドネスは2000年代後半からインターネット業界で話題になった言葉です。過去、インターネットのバナー広告は、カラフルで動きのあるものほど閲覧されやすいという常識がありました。インターネットの利用者が増加し、バナー広告を利用する企業が増える中で、バナー広告の効果が浸透していったのです。しかしながら、実際には訪問者にとって興味のないバナー広告もあります。関心のない情報は見ることを避け、そして結果的に、Webサイトの訪問者がバナー広告やそれに似たように見える部分を本能的に無視するようになったのです。この現象のことをバナーブラインドネスと言います。

バナー広告の商品は自分の欲しいモノとは限りません。Web訪問者にヒューリスティックスが働き、自分に関係のない情報は視線からカットするようになったのです。このことは多くの情報がある中で、自分の必要な情報を素早く拾い上げるという意味では良いことなのですが、一方で必要な情報を見落とすという可能性も生み出しました。

このバナーブラインドネスという現象を受け、企業は徐々にカラフルで動きのあるバナー広告を減らしていきました。綺麗にレイアウトしすぎない工夫をしたり、問題提起や情報提供で面白さを匂わせ、『詳しくはこちらで』と誘導したりするデザインとなっていったのです。

ヒューリスティックスによる行動があるということを知っておくことは、自身の行動を客観的にみる上で重要な要素の一つと言えます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

経済統計各種

本日は経済統計各種に関して記載します。

【各国のマーケットに影響を及ぼすアメリカの経済統計】

アベノミクスによる株価の上昇が資産効果を生み消費意欲を増しているように、株式市場の値動きは景気に与える影響の大きい要素の一つだと言えると思います。その株価を含め、債券、為替などの金融市場の予測を行うことをメインとしているエコノミストが注目している経済統計に“アメリカ労働省が毎月発表する「雇用統計」”と“全米供給管理協会(ISM)が毎月第一営業日に公表される「ISM製造業景況感指数」があります。なぜアメリカの経済統計が注目されるかですが、同国のGDP規模は他国から群を抜く大きさで株式市場の時価総額も世界最大ですので、それだけ注目度が高いということになります。次に雇用統計が注目される理由としては、米連邦準備制度理事会(FRB)が“雇用の最大化”と“物価の安定”という2つの使命(デュアル・マンデート)を担っているためです(なお、中央銀行で雇用の安定を目標にしているところは珍しいそうです)。続いてISM製造業景況感指数です。これはアメリカの製造業の購買担当役員へのアンケート調査結果を指数化したもので、50を超えるかどうかが景気の強弱の分岐点とされます。アメリカの企業収益との連動性が高いと言われています。

【日本の株式市場関係者が気にする経済指標】

さて、日本国内の株式市場関係者が気にしている経済指標の一つに“内閣府が出す「景気ウォッチャー調査」”があります。これはタクシーの運転手やコンビニの店長などの現場の人たちに皮膚感覚の景況感を聞いて、その答えを指標化したものです。この景気ウォッチャー調査に基づいて、街角の実感を反映した「先行判断DI」という指標があります。これは2~3か月後の景気の良し悪しを予測するもので、日経平均株価との相関が高いため市場関係者が注目しています。

【一国経済規模を表す概念】

上記でGDPやDIという言葉を記載しましたが、これらについても以下記載しておきます。

・GDP(国内総生産):国民所得を国内の生産活動による付加価値総額と定義したもの。

国内総生産=民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成+在庫品増加+経常海外余剰

※民間最終消費支出:家計などが行う消費への支出額

 政府最終消費支出:政府が行う消費への支出額

 総固定資本形成:企業などが行う新規生産設備(固定資本)購入への支出額

 在庫品増加:企業による在庫の積み増し(売れ残り)分を時価評価し、自企業への支出額とみなす。

 経常海外余剰:財・サービスの輸出―財・サービスの輸入(準輸出)

・GNP(国民総生産):国民所得を国民の生産活動による付加価値総額と定義したもの

国民総生産=GDP+海外からの純要素所得受取り

(海外からの純要素所得受取り=海外からの要素所得受取り―海外への要素所得支払い)

※昔はGNPという言葉の方をよく聞いていたと思いますが、日本では1993年よりGDPが使われるようになっています。また、内閣府が発表している日本の国民経済計算では2000年からGNPはGNI(国民総所得)へ呼称変更されています。

・国内純生産と国民純生産

GNP、GDPともに固定資本減耗(減価償却)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには固定資本減耗を差し引く必要があります。それが国内純生産(NDP)と国民純生産(NNP)です[阿部敦忠1] 。

NDP=GDP-固定資本減耗

NNP=GNP-固定資本減耗

・国内所得と国民所得

NDP、NNPともに純間接税(=間接税―補助金)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには間接税を差し引き、補助金を加える必要があります。それがDI(国内所得)およびNI(国民所得)です。

DI=NDP-純間接税

NI=NNP-純間接税

経済を分析するにあたって様々な統計が活用されています。経済の大きな流れを見るうえで、これら数値から大きな潮流を見ると様々なシーンで役に立つと思われます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29ほか)


 [阿部敦忠1]

行動経済学の時間選好

本日は行動経済学の時間選好〈アメリカの牛乳の売上を回復させた「GOT MILK?」キャンペーン〉に関して記載します。

【「GOT MILK?」キャンペーン】

1993年に始まったアメリカのカリフォルニア牛乳協会による「GOT MILK?」キャンペーンという牛乳の愛飲促進キャンペーンがあります。このキャンペーンは15年間減り続けた1人あたりの牛乳消費量を回復させることに成功しました。

なお、「GOT MILK?」キャンペーンが始まる前に何も対策を打っていなかったというわけではありません。政府による健康促進キャンペーン「Milk Does a Body Good(ミルクは体にいいですよ)」という牛乳の飲用促進キャンペーンが行われていたのです。このキャンペーンの結果、93~94%の人が牛乳は栄養価が高いと認知し、90%の人が牛乳にはカルシウムが含まれていることを知り、その中の多数が牛乳のカルシウムで骨粗しょう症を予防できると理解するようになりました。それでも牛乳消費量は増えなかったのです。

しかしながら、「GOT MILK?」キャンペーンが始まったことにより、1994年の牛乳販売量は7.4億ガロンから7.55億ガロンへと上昇。牛乳消費量を回復することに成功したのです。

このキャンペーンのTVCMは10年以上続いていて多くのパターンがあり、その内容は、登場人物が甘いビスケットやケーキ、シリアルを食べていて、牛乳を飲もうとするとちょうどなくなっていたり、自販機が壊れていたりという内容です。あるCMでは飛行機を操縦しているパイロットが墜落のリスクを冒してまで機首を下げ牛乳の乗ったカートを自分のところまで近づけようとしたものの結局飲めない、というようなものとなっているそうです。

「Milk Does a Body Good」が将来の健康を消費者にアピールしていたのに対し、「GOT MILK?」は“今”飲みたいんだということを消費者にアピールする内容となっています。このことが牛乳消費量を回復させる結果につながったのです。

【行動経済学 時間選好に関して】

消費者の商品・サービスに対する価値の感じ方は常に一定ではありません。同じ商品・サービスでも価値の感じ方は変わります。その感じ方を大きく左右するものに「時間」という要素があります。「今を意識して買うのか」それとも「将来を意識して買うのか」その違いにより価値の感じ方が異なります。将来に消費するよりも現在に消費することを好む程度を「時間選好率」と言いますが、時間選好率が高いほど現在の消費を重視し、低いほど将来の消費を重視します。また、人間は間近の出来事に対しては「せっかち」になり、遠い先の出来事には「気長」になる傾向があります。例えば「今持っている1万円」と「1年後に手に入る1万円」では、今は手元にない1万円の方の価値の方が低くなります(将来の価値を現在の価値に換算する時、どのくらい割り引いて考えるかを表す率を「時間割引率」と言います)。この考え方を踏まえ「GOT MILK?」は将来の健康ではなく今飲みたいんだということへ立ち位置を変化させたのです。

上記のように行動経済学を踏まえたマーケティングの実施により売上を伸ばせるということが言えます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

アベノミクス景気と今後の乗数効果

本日はアベノミクス景気の今後と乗数効果に関して記載します。

【今後の景気動向に関して】

現在、2012年11月を底として景気回復局面に入っているとみられています。今回の景気回復については内需が主導する形で景気が良くなってきています。直近5四半期の経済成長を見てみると、外需が12年10~12月期、13年7月期~9月期、同年10~12月期とマイナスになっているのに対し、実質GDPは5四半期ともプラス成長を維持しています。これは民間の消費がプラス(人々がたくさんのモノやサービスを購入している)ということが要因として挙げられます。このように民間の消費が増えたのには、日経平均が12年秋に9000円前後だったのに対し、昨年末は1万6000円を超えたことによる「資産効果」が大きかったということが挙げられます。また、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響による節約志向に対して、消費者が「節約疲れ」をしてきたのではないかとも言われます。

このように外需ではなく内需によって景気回復が進んできているのですが、2014年の4~6月期はマイナス成長に陥るのではないかとみられています。その要因としては「消費増税による駆け込み需要の反動」や「物価上昇」による影響があります。

一旦マイナス成長に入る経済ですが7~9月期には再びプラスに転じると見込まれています。それは多くの企業がボーナスの支給額を増加していますので消費が盛り返すことが想定されているためです。また、公共投資の効果が7~9月期以降に効いてくるとみられているためです。2月上旬に成立した13年度の補正予算で公共投資が1兆円規模で上積みされていますが、この効果が発揮されてくるのです。近年、日本では公共投資は効果がなくなってきているとも言われますが、“乗数効果”により景気を押し上げる効果は今なお見込めるということです。

【乗数効果とは】

乗数効果とはマクロ経済学で用いられる経済効果で、政府支出や投資の増減がその増減額以上に国民所得を増減させることを言います。例えば、政府が公共施設の建設費などの政府支出を1兆円増加させるとすると、その支出の受け手である企業の所得が1兆円増加します。次にこの企業は取引関係にある企業への支払いなど消費を増加させ、この消費の増加分だけ再び誰かの所得を増加させることになります。このようなプロセスを繰り返して国民所得は当初の政府支出以上に増加していくのです。

この乗数効果は過去国会で取り上げられ話題になったこともありました。

いよいよ、4月から消費増税となります。2014年日本経済がどうなるかの大きなポイントの一つと言えます。4月以降の景気の動向に注目です。

〈補足〉乗数効果の追加説明

“政府支出の大きさが変化(△G)”と“国民所得の大きさが変化(△Y)の関係を考えた場合、△Y=1/(1-c(限界消費性向))×△Gとなります。限界消費性向とは国民所得が増加した時、そのうち消費の増大に割り当てられる部分を言います。

■例えば、限界消費性向を0.7として、Gが10億円から13億円に増加した場合

△Y=1/(1-0.7)×(13億円―10億円)

△Y=1/0.3×3億円

△Y=10億円

3億円の政府支出の増加で国民所得は10億円になりました。

投資額についてもGの変化と同様となり、△Y=1/(1-c)×△Iとなります。

1/(1-c)を政府支出乗数または投資乗数と言います。

上記は閉鎖経済モデルの話として記載しましたが、政府支出は景気をコントロールする重要な施策であると言えます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29他)

吉野家から見るターゲティングに関して

本日は吉野家から見るターゲティングに関して記載します。

【ターゲティング(顧客の選別)に関して】

企業が自社の商品やサービスを購入してもらえる顧客を選ぶ際には、まずニーズを把握し、次に顧客をニーズで分類(セグメンテーション)し、そして複数に分類したセグメント(顧客集団)から自社がターゲットとする顧客を選びます。

このようにして企業は顧客の選択(ターゲティング)を行うのですが、これを行う際には大きく分けて3つのパターンがあります。その3つのパターンは“無差別型マーケティング”“差別化型マーケティング”“集中型マーケティング”です。

■無差別型マーケティング:単一の商品やサービスで市場全体をターゲットとする方法

■差別化型マーケティング:複数のセグメントをターゲットにし、それぞれに別々の商品やサービスを提供する方法

■集中型マーケティング:1つのセグメントをターゲットとして、そのセグメントに自社の経営資源を集中投下する方法

無差別マーケティングは品不足の時代に多くの企業が用いたやり方だそうです。当時は、セグメンテーションなど考えずに、作った商品を市場に出せば売れたということがあったようです。

差別化型マーケティングと集中型マーケティングに関しては吉野家を軸にして内容を見てみます。

【差別化型マーケティング 吉野家の女性・家族客をターゲットとした戦略】

吉野家はカウンター席が主体なこともあり、利用客の85%が男性です(すき家は約30%が女性客・家族客)。このことから同社は女性客・家族客を増やすため「レンガ風のタイルを貼った外装」「白を基調とした明るさと開放感を演出した内装」「テーブルの併用」といった女性や子供が親しみやすい内外装へ切り替えています。

他にも女性専用メニューの試験的な販売やお子様セットの提供を行っています。更には「よっぴー」というUFOに乗ったキャラを生み出し、子供に親しみを持ってもらえるようにしています。

吉野家のこの戦略は、店舗の内装やメニューを女性客や家族客に合わせて変更する、差別化型マーケティングと言えます。

【集中型マーケティング フォルクス】

吉野家ホールディングス傘下の“どん”は高級路線に向けてステーキ店“フォルクス”の事業を強化しているのですが、このフォルクスは家計に余裕のある団塊世代の囲い込みを目指しています(すかいらーくやロイヤルホールディングスは家族連れをターゲットにしています)。そのためにフォルクスは、「ワンランク上の牛肉」「コース料理」「レンガと木目調の店内」「個室風の席」など、静かに落ち着いて食事をしたいという団塊世代のニーズに応えるようにしています。

フォルクスは団塊世代に経営資源を集中させている戦略を採っていると言えそうです。

なお、集中型マーケティングは、特定のセグメントに特化しますので、狙った顧客にだけ絞った商品開発、販売促進を行うために、各種費用を減らすことができるというメリットもあります。

企業が自社の商品・サービスをどんな人に売るのかを考えるに当たってはターゲットをどうするのかということを十分に考えることが必要そうです。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

JR九州の差別化集中戦略

本日はJR九州の差別化集中戦略に関して記載します。

【JR九州の観光列車】

JR九州の列車に「特急 A列車で行こう」「特急 あそぼーい」「特急 ゆふいんの森」などの観光列車がありますが、好調な結果を出しているようで、2011年度に総本数11600本、利用者数が過去最大の70万人超えるという結果を残しています。人気の秘密には“個性的な内外装”“初めての顧客に提供する1対1の手厚いサービス”“沿線の観光資源をフル活用した企画”ということがあるようです。

例えば「特急 あそぼーい」の内装を見てみると、窓側がいつも子ども席になるように配慮された親子席「白いくろちゃんシート」や木ボールに埋まって遊べる「木のプール」や子どもたちが寝転がれる「和室」などがあり、普通の列車と比べるとかなり特徴あるものとなっています。

また、沿線の観光資源という面から見ると例えば「あそぼーい」については阿蘇、「特急 ゆふいんの森」は湯布院といった観光スポットを通る形となっています。

接客に関しては、客室乗務員が出発を待つ乗客に次々と話しかけ、接客に必要な情報を収集し、それを乗務員間で共有。そしてそれを踏まえて、「一番遠方から来ていただいた顧客にはお礼状を手渡す」「誕生日の人には即席で手作りボードを用意して、記念撮影をして誕生日をお祝いする」ということを行っています。これらのサービスによって感動した顧客が口コミによって情報を拡散しファンを増やす結果につながっているそうです。

JR九州は観光列車という分野に集中し、さらには手厚いサービスを実施することで、他社との差別化を図っているのです。

【3つの基本戦略】

企業は経営戦略を立てるにあたって「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」という3つの基本戦略のいずれかを選んで、市場で有利な地位を確保しようとします。この3つの基本戦略はポーターが提唱した戦略で、価値とコスト、そして対象とする顧客に着目した戦略となります。

■コストリーダーシップ戦略:業界全体を対象として低コストで製品を提供する戦略。

■差別化戦略:業界全体を対象として製品の品質などを差別化して製品を提供する戦略。

■集中戦略:特定の業界を対象として低コストまたは差別化された価値で製品を提供する戦略。(この戦略で低コストの製品を提供することをコスト集中戦略、差別化された価値で製品を提供することを差別化集中戦略)

JR九州の戦略は上記3つの内の「集中戦略」に当たり、さらにはサービスという付加価値を与えていることから、差別化集中戦略をとっていると言えます。

集中戦略をとる場合、集中化した市場が縮小するというリスクがあります。少子高齢化する日本において市場は自然と縮小しますから、ターゲットとする市場とともに自社も縮小してしまわないように創意工夫していくことが必要なのでしょう。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

ゼビオの多角化戦略

本日はゼビオの多角化戦略に関して記載します。

【スポーツ用品、アパレル小売業“ゼビオ”のドラッグストアへの参入】

福島県に本社を持つスポーツ量販店のゼビオは、スポーツウエアや用品類を扱う大型店スーパースポーツゼビオの店内に、ドラッグストア“ジアシス”を開設しています。ジアシスは2012年から本格展開を始めていて、毎年3~4店舗のペースで拡大しています。その背景には、マラソンなどのスポーツを本格的に挑戦する人が増え、プロテインやサプリメントなどを活用する人が増えるという判断があるようです。

ジアシスでは、体力増強・疲労回復・けがの防止や予防といったアスリートが抱えがちな悩みをカウンセリングし、スポーツ店だからこそできる提案をしていくという考えのもと、一般用医薬品販売の資格を持つ販売員がスポーツ関連の知識も身につけて接客を行っています。販売員は、例えば膝の痛みを抱えるランナーにクッション性の高いランニングシューズを進めたり、関節の痛みを和らげるサプリメントを提案したりしています。また、来店頻度を高めるために、疲労回復効果のある酸素カプセルや身体情報が得られる体組成計を各店に置いて、気軽に利用できるようにしているそうです。

ゼビオはスポーツ量販店の中にドラッグストアを併設することにより、従来のスポーツ量販店では扱いにくかった商品やサービスを提供しているのです。スポーツ量販店とドラッグストアという多角化戦略によって相乗効果が生まれています。

【成長戦略としての多角化戦略】

企業は多角化戦略をとることによって、複数の事業で経営資源を共有することができます。既存の技術やノウハウなどの経営資源を複数の事業で使用することができるので、それによって相乗効果が生まれて、成長性や収益性を高めることができます。多角化戦略は単一の事業を行っている場合と比較すると成長性(売上と利益の伸び)が高い傾向にあると言います。

また、この戦略は事業を多角化しますので、その分リスクを分散することができるというメリットもあります。

さて、多角化戦略の成功要因として最も重要とされていることに範囲の経済があります。範囲の経済とは、単一事業で事業活動を行うよりも多角化で複数の事業活動を行う方が、コストが低くなることです。技術・ブランド・顧客の信頼・ノウハウ・流通網などの資源を、複数の事業でともに利用することが多角化戦略を成功させる重要なポイントとなるのです。

スーパースポーツゼビオとジアシスは技術や顧客の信頼、ノウハウなど経営資源を共用しながら店舗運営を行っています。このことからゼビオは複数の事業で効率良く経営資源を活用しながら成長を図っている企業と言えそうです。

多角化戦略を行う際には複数の事業間で如何に経営資源を共用できるかということが重要なポイントのようです。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”の基本)

価値システムの変化による脅威

本日は“価値システムの変化による脅威:キングジムの戦略”に関して記載します。

【価値システムとは】

価値システムとは「収益モデルを支える事業のつながり」のことを言います。“収益モデル”は、儲けの仕組みのことで、企業が顧客に「商品・サービス」を提供し、その対価として顧客から代金をいただくという仕組みです。そして“事業のつながり”とは、例えばメーカーであれば「原材料の採掘→部品の製造→製品の製造→製品の流通→最終消費者への製品の販売」というようなことを言い、製品・サービスが顧客の手元に届くまでの一連の流れのようなことを言います。この価値システムが変化する時、既存の企業の脅威となることがあるのです。

【キングジムの戦略】

キングジムは主に家庭用の文具を製造、販売する会社で、主力であるファイルを中心とした文房具やテプラなどの電子文具も多数開発している企業です。このキングジムが2012年7月1日付で広島に本社を持つドリームネッツより電子書籍出版・書店開設サービス「wook(ウック)」運営事業を譲り受けることに合意しました。

電子書籍出版・書店開設サービス「wook」は「誰にでも簡単に電子書店を開設できる」をコンセプトにした電子書籍・出版ソリューション事業です。「wook」を使うことで、誰にでもインターネット上に独自の電子書店を開設でき、さらには簡単な操作で電子書籍の作成や販売も可能になるそうです。「wook」で提供される電子書籍は、パソコンはもちろんのことiPad、iPhone、Android端末からでも専用のビューアアプリを使用して閲覧が可能です。

同社の流通網を活用し事業の拡大を狙っています。このキングジムの「電子書籍・出版」市場参入は従来からある出版社などの収益を目減りさせる可能性がある“脅威”となります。電子書籍の出版が普及していくということは、今までの「出版社→印刷会社→製本会社→出版卸売業者→リアル書店」の流れが途中で省略される可能性があるということです。これにより、著者から顧客の手元まで届く今までの事業のつながりが変化し、それに合わせて従来からある既存の企業が衰退に追い込まれる可能性が出てくるのです。

価値システムは、顧客に提供する新商品や新サービスの出現により変化する可能性があります。例えば“ポケベルに対する携帯電話”“フィルムカメラに対するデジタルカメラ”“ワープロに対するパソコン”が挙げられます。また、新しい儲けの仕組みが出現することによっても、価値システムは変化する可能性があります。これはアマゾン登場(リアル店舗に対するネット店舗の登場)が、従来からある「出版卸売業→リアル書店」という価値システムを変化させたという例が挙げられます。

キングジムでは「wook」によって自費出版のサポートも行っているようです。ネットの普及により“出版をする”ということの垣根が低くなってきているようにも感じさせられます。社会の環境変化はどの時代にもあるのでしょうけれど、その変化は大きな流れとなって確実に僕たちの生活を変化させていくのでしょう。そのことを織り込んだ行動が大切だとも言えると思われます。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

東京・日本橋室町地区の再開発

本日は東京・日本橋室町地区の再開発に絡めて記載します。

【コレド室町2・コレド室町3オープン】

2014年3月20日に日本橋に新たな商業施設「コレド室町2」と「コレド室町3」が開業しました。この両施設は三井不動産が中心となって進めている日本橋再生計画の一環で、2010年10月に開業した「コレド室町」に続く「日本橋室町東地区開発計画」の第2弾となります。コレド室町2には「TOHOシネマズ日本橋(全9スクリーン、約1800席を備えるシネマコンプレックス)」という目玉施設があります。また、地下1階が有名レストランや老舗の“つくりたて”の味が楽しめるゾーンとなっており食の物販も充実しています。コレド室町3に関しては生活雑貨が充実していることが特徴です。週末には深夜まで営業するダイニングやバル、ビアレストランもあり、シネコンも金・土曜日はオールナイト上映が行われる予定となっています。このような形で営業することで「コレド室町」「コレド室町2」「コレド室町3」の3館合計で年間来館者1700万人、年間売上は110億円を目標としていきます。

【日本橋再開発:日本橋川を軸とした再開発】

日本橋川は神田川から流れ、隅田川にそそぐ川です。この川が日本橋再開発の軸の一つとされています。東京都は2013年1月に「水と緑のネットワーク実現プロジェクト」を発表し、2020年の東京の姿を表しました。その内容は「水辺では様々なイベントが開催され、オープンカフェなどが多数設置され、多様な船が行き交い、1年を通じて多くの人々で賑わっている。」「水辺には商業施設が集まり、美しく整えられた景観がつくられるなど、水辺の魅力が向上している。」といったものです。そしてその実現に向けて都は2013年度から2015年度の3か年計画で「水陸両用バスなど、多彩な船による縦横無尽のネットワークを隅田川と内部河川でつくるため、防災船着場を活用して新たな舟運ルートを開発する。」「テラスの連続化・修景による水辺の散策の回遊性をよくする。」ということを盛り込んでいます。このような中で、日本橋西詰には日本橋川を臨むテラス席を設けたレストランがオープンし始めているそうです。今後、東京オリンピックを見据え、外国人観光客が増えていく中で、水辺観光が賑わっていくことが想定されます。

【中央通り】

日本橋に通る「中央通り」ですが、この通り沿いの高層ビルの低層部の高さは100尺(約31m)に統一されています。高層部はデザインを変えることで、既存の街並みと調和するようにしています。これは江戸時代、中央通りに建ち並ぶ大店の庇が同じ高さで続き、一つの景観を作っていたことを参考にしています。

東京駅付近には、羽田~成田を1時間以内で結ぶ高速鉄道計画の途中駅の「新東京駅」が設置される計画となっています。日本橋付近の人の流れが今後変わってくることが想定されます。

(参考文献 東京2020計画地図)

モバイル決済に関して

本日はモバイル決済に関して記載します。

【レジに並ばないで決済:Square】

2013年10月11日、ユニクロ銀座店の12階にオープンした「ウルトラライトダウン スペシャルストア」で、アメリカのモバイル決済サービス「Square(スクエア)」が導入されました(アメリカのシリコンバレーのベンチャー企業「Square」がこのモバイル決済サービスを始めました)。このことは国内大手小売チェーンでは初で、大きな話題を呼びました。Squareはスマートフォンをクレジットカードの決済端末に変えてしまうサービスです。仕組みとしては、まず、店舗が用意したスマートフォンのヘッドホンジャックに、小型のクレジットカード読み取り機(Squareリーダー)を差し込みます。そしてスマートフォンには、無料の専用アプリをインストールします。そうするとスマートフォンが決済端末になるという画期的なサービスです。「ウルトラライトダウン スペシャルストア」ではフロアにいる担当スタッフがiPadをPOSレジとして使用。その場でクレジット決済を行います。週末のユニクロは大勢の顧客がいるため、レジ前に列ができます。スタッフが持っているiPad端末で決済ができればレジに並ぶ必要がなくなりますので、サービス面の向上につながります。10月の段階ではSquareリーダーに対応のするクレジットカードはVISAとMasterCardの2種類のようですが、ユニクロとしては今後、Squareの導入店舗を順次拡大し、繁忙期のレジ待ち時間の緩和を目指していくそうです。

【今後の広がりが想定されるモバイル決済】

ユニクロのような大手小売業以外でもSquareのようなモバイル決済が今後進んでいくかもしれません。中小事業者で今まで費用対効果の面からクレジットカード端末を導入しておらず、カード払いを受け付けていなかった企業についても、モバイル決済を導入してカード払いに対応できるようにしてくる可能性があります。Squareは2013年5月に日本に上陸したのですが、中小事業者をターゲットに、三井住友カード、ローソンのバックアップのもと、普及を進めようとしています。Squareとローソンは13年8月にSquareリーダーの取り扱いを全国のローソン店舗(ローソンストア100は除く)で開始しました。なんとその価格は税込980円。更には1000円のキャッシュバックがされます。Squareリーダーが実質無料で使用できるという内容です。

Squareの類似サービスとして楽天の提供する「楽天スマートペイ」、日本PayPalの「PayPal Here」、ベンチャー企業の「Coiny」などもあり、多くの企業がモバイル決済市場に参入しています。

Squareはレシートを携帯電話の番号(SNS)やメールアドレスに送信することができるようです。技術が進んでいく中で、モバイル決済のようなサービスが今後も登場し、普及していくと思われます。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)