プライベートブランド(PB)の歴史

本日はプライベートブランド(PB)の歴史について記載します。

最近、イオンのトップバリュのCMをよく目にします。PBは少し前まで安いモノというイメージでしたが、このイメージが変わってきているようです。そこで、PBの歴史について以下見てみます。

【PBの誕生】

日本でのPBの歴史は1959年に大丸が「TOROJAN(トロージャン)」というブランドのスーツを売り出したことに始まります。価格は1万3000円。低価格を武器にして勝負をしていくというものではありませんでした。低価格を武器とした商品としては、その翌年にダイエーが「ダイエーみかん」というみかんの缶詰を販売しています。これは缶詰自体にダイエーと入ってないノーブランド製品でした。ダイエーはこの後、1961年にダイエー社史の中で最初のPBとして紹介されているインスタントコーヒーを販売。翌62年に東洋紡と共同で「TOYOBOブルーマウンテンカッターシャツ」、食品分野で中小メーカーと組んで「ダイエー粉末ジュース」「ダイエー・マーガリン」「ダイエー・ラーメン」など販売。65年には日清製粉に依頼し、小麦粉の「ビーナー」を発売しました。こうして日本にPBが登場します。しかしながら、日本は高度成長期にあり、メーカーがモノを作れば飛ぶように売れた時代であったため、メーカー側からすると小売側に価格決定権を渡さなければならないPBを作る必要はありませんでしたし、小売側からしても手間をかけてPBを開発する必要はありませんでした。その様な中でダイエー創業者の中内功だけが、価格は消費者が決めるべきだという信念の下、PB作りを邁進していきます。

【第1次PBブーム】

1973年第4次中東戦争を受け、第1次オイルショックが起こります。これにより74年1年間で日本の消費者物価は23%も上がってしまいました。このインフレにより消費者は生活防衛のため低価格の商品を求めるようになります。そして、そのことが第1次PBブームを巻き起こすこととなります。74年にジャスコ(現イオン)は、日清食品がそれまで100円だったカップヌードルの価格を130円に値上げし、それを一方的に小売側に通告したことに対して抗議し取引を打ち切り、「Jカップ(カップ麺)」というイオン初のPBを88円で販売。80年には西友が無印良品を販売。ダイエー以外の他のチェーンストアもPB販売に踏み切っていきます。またダイエーは更にPBを充実させていき、80年に「セービング」を販売しています。

【第1次PBブームの終焉と第2次PBブームの到来】

第1次PBブームでのPBは価格上昇に対抗して作られたもので、価格訴求が主眼に置かれ品質が二の次になっていました。2度のオイルショックを受けて物価が落ち着くとPBに消費者は目を向けなくなり、バブル経済が始まると第1次PBブームは幕を閉じることとなります。

しかし、バブルが1991年崩壊すると消費者の財布の紐が固くなると同時に、急激な円高が進んでいきます。こうした状況下で円高による輸入価格の下落を利用して、ダイエーは再びPBの販売を強化していきます。また、94年にはイオンのトップバリュー(現トップバリュ)の販売がスタートしました。第2次PBブームは円高から円安に振れ、色あせていきます。

【現在の流れに至る、第3次PBブーム】

2007年頃からサブプライム・ローン問題が表面化し、2008年リーマンショックにより、日本の景気が悪化していきます。この状況下でトップバリュが売上を一気に伸ばします。その勢いは強く、08年は売上が対前年比40%増で3687億円、09年は同20%増で4424億円という結果でした。そこにセブン&アイのセブンプレミアムが加わり、現在の流れになってきています。

低価格が押しであったPBという形から、価値の高いPBという形へと時代とともに変わってきたことが伺えます。今の第3次PBブームは今までのブームと異なり、一過性に終わらず、日本の市場に定着しているという話もあります。PBで様々な価格帯のブランドを立ち上げているということも見られるようになってきています。長い不況を経て日本の小売市場が変化してきていることがPBの歴史を見ても伺うことができます。

(参考文献 月刊BOSS 2014年3月号臨時増刊号)

女性限定マラソン大会「ランガール・ナイト」のプライシングに関して

本日は女性限定マラソン大会「ランガール・ナイト」のプライシングに関して記載します。

「ランガール・ナイト」というお台場で開催される女性限定のマラソン大会があります。これは「ランガール」という一般社団法人が主催している大会で、同法人は自分たちのことを「走る女性ならではの視点・パワーを活かし、生活を浴衣にするアイデアを様々なカタチに変えていく企業集団」とし、先ほど記載したランガール・ナイトの企画・運営やランニングを通じての地域活性化などの活動を行っています。

さて、この女性限定のマラソン大会「ランガール・ナイト」ですが、2011年に開催された時には参加費が8000円に設定されていました。この価格設定は他の競合のマラソン大会の参加費と比較すると高額になります。東京マラソンだと参加費がフルマラソン1万円・10キロコース5000円、距離設定がランガール・ナイトと似通っている三浦国際市民マラソンだと、ハーフマラソン4000円・10キロ3500円・5キロ2500円となっています。2013年に開催された時にはランナーの参加費が6500円でしたので、2011年と比較すると若干安くなっていますが、それでも比較的高めの価格設定となっています。

このように高めの価格設定が行われているのには戦略的な意味合いがあります。

マラソンやランニングの価値構造を考えてみると、まず中核価値として「走ることによって得られる健康維持や体力作り」ということが挙げられます。それに加えてランガール・ナイトは女性の視点にこだわって作られていて、実体価値として「おしゃれに走ること」という価値が加わります。そして付随機能として“レース前のメイクレッスンやエクササイズレッスン”“レース後のパーティーやショー”がありますし、更衣室や託児所も用意されています。参加する女性にとっては高い参加費を払っても参加したいという価値があります。

また、あえて高い価格設定をすることによって、参加者をふるいにかける(フィルタリング)という効果があります。つまり、参加費を高額に設定することで、おしゃれに走る女性でありたいという意識の高い人が参加するよう絞り込みを行うのです。高い参加費を払って参加する人たちは共通の価値観を持っているため、イベント自体が盛り上がるという効果も期待できます。

フィルタリングという手法はよく見られるように思います。消費者側としては製品・サービスの価格が表している意味合いを考えることも重要なのでしょう。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

カラオケの新たなコンセプト

本日はカラオケの新たなコンセプトに関して記載します。

【コアなファンを囲い込む「カラオケの鉄人」】

少し前にカラオケに行った時、アニメ好きの人たちのオフ会が開かれていて、ドリンクバーの前はコスプレした人たちが集まり、隣の部屋からはアニメソングらしき歌がずっと流れてくるという場面に遭遇しました。この時はたまたまなのでしょうけれど、たまに歌の履歴を見てみるとアニソンが連続して入っているということもよくあります。僕もカラオケに行くと金爆やら筋少やら偏って歌っているので気持ちは分かります。

さて、こういった時代背景を受けてか、大手カラオケチェーンとしては後発組である「カラオケの鉄人」では、アニメやボーカロイド、ご当地ヒーローなど多様なジャンルのカラオケ未配信曲を単独配信することで、ニッチな需要に応え、固定客を獲得しています。追加したオリジナル楽曲はこの取り組みを始めてから2年間で15000曲に及ぶといいます。また、楽曲配信しているアニメなどのコンテンツとタイアップし、期間限定でそのコンテンツの世界観で演出した部屋を用意しています。このように「カラオケの鉄人」ではニッチな需要に応えることでコアなファンの囲い込みを図っているわけです。

【価値構造の見直し:歌を歌わないカラオケルーム】

「シダックス」等、カラオケルームを会議室として使用することを提案する企業が現れています。フロントに貸し出し用のホワイトボードを用意し、室内大型モニターへのパソコン接続もできるようにしているそうです。当然のことながら、カラオケルームには防音が施されていますので、外に音が漏れる心配もありませんし、会議に参加する人数に応じて部屋の大きさを選ぶことが出来ます。

カラオケ本来の価値構造を見てみると、“顧客が手に入れる便益(中核価値)=歌を歌う”“製品の特性を構成する要素(実体価値)=個室・防音”“中核価値には直接影響を及ぼさないが、それがあることで製品の魅力が高まる要素(付随機能)=飲食の提供”ということになります。その中で「シダックス」等は実体価値の「個室・防音」に注目し、そこから「会議室として使用する」「プレゼンに使用する」という新たな中核価値が現れたのです。オフィス街隣接立地のカラオケであれば、昼間はアイドルタイムとなりますので、カラオケルームを会議室として使用してもらい、少しでも売上を上げられるようにした方が良いと言うことにもなります。

価値構造を見直すことにより、新たなコンセプトが現れるということです。

シダックスでは会議室という使用方法以外に楽器練習にも使えるとアピールしています。自らの価値を整理し見直すことで新たな価値が見えてくるようです。 (参考文献 「販促会議February 2014」「ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本」)

金沢工業大学のSTP戦略

本日は金沢工業大学のSTP戦略に関して記載します。

【STP戦略】

STP戦略とはコトラー理論の中核的な位置づけのフレームワークでSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)のことを言います。このSTP戦略はセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順番で進めていきます。まず、セグメンテーションで市場に点在する顧客の中から自社の顧客となるだろう塊を見つけ出します。そしてセグメントの切り口からターゲットを見つけます。そして最後にポジショニングとして、ターゲットの価値観に基づいて自社を見た時に、どうすれば競合よりも魅力的になるかを考えていきます。

【STP戦略で成功した金沢工業大学】

現在、少子化が進み18歳の人口が減少する一方、大学数は昭和60年460校→平成21年773校と増えてきています。大学経営はターゲットが減り続ける一方で競合相手が増える環境に置かれています。その中で、金沢工業大学は地方都市にある私立大学と、一見厳しい状況に置かれているにも関わらず、朝日新聞社が発行する大学ランキングでは2011年版で、学長からの評価で教育分野が6年連続1位、高校からの評価でも全国16位と、好評価を受けています。また、2008年度の就職率は99.5%で約7割が上場企業、大手企業、公務員に就職しています。

この結果を出すに当たり、金沢工業大学は1995年から、将来の少子化を見越し、地方の工業大学が生き残るために改革を実施します。同校は金沢に立地していますが、全国から入学者を集めています。入学者のターゲットとしては、偏差値50弱で理数系志望の生徒たちとしました。ターゲットとする生徒は、偏差値がそれほど高くない一方、数理系を毛嫌いする生徒ではありません。同校は研究より教育に力を注ぎ、入学してきた生徒を徹底的に教育していきます。それにより生徒たちの学力が伸びていくこととなります。また、地方にあるというデメリットを、遊ぶ場所が少ないため勉強に励めるというメリットと捉えています。こうして学力をつけた生徒たちはモチベーションが高くなっていき、企業側から見て必要な人材に育っていきます。同校のポジショニングは『教育付加価値の高い大学』です。

顧客を絞り込み自社の在り方を明確にすることで、厳しい競合環境に置かれ、その中で不利な状態にあるとしても、勝機があるということが、金沢工業大学の例から伺えます。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

100円ショップ業界から見る5F分析

本日は100円ショップ業界から見る「5つの力(5F)分析」に関して記載します。

【5つの力(5F)分析】

自社を取り巻く環境を構造的に分析する際に使用する手法として、経営学者のポーターは「5F分析」という5つの競争要因に分けて分析する手法を紹介しています。5つの競争要因については以下のようになっていて、それぞれの要因に注目して自社の置かれた環境を考えていきます。

■業界内の競争:同じ業界内の競合企業との力関係と競争の激しさ。

■売り手の交渉力:商品を作る原材料を供給してくれる企業が、どの程度、供給価格に変化をつけてくれるか。

■買い手の交渉力:自社商品を購入してくれる顧客が、どの程度スイッチングの可能性を持っているか。

■新規参入の脅威:現時点では競合関係にない企業が、突如として競争に参入してくる可能性。

■代替品の脅威:自社が提供している商品より魅力的な商品が開発され、代替されてしまう可能性。

【環境変化に伴う100円ショップ業界を5F分析で見る】

100円ショップ業界は2002年ごろの勃興期と2008年ごろの成熟期で、その事業環境が大きく変化しました。その変化を5F分析で見てみると以下のようになります。

2002年ごろ(100円ショップ勃興期)

■業界内の競争:100円ショップのパイオニア「ダイソー」が圧倒的に強いポジションを確保していた。

■売り手の交渉力:ゼロに近い。ダイソーは一気に大量な商品を発注。メーカーはダイソーに仕入れてもらいたくて列をなすような状態。

■買い手の交渉力:ゼロに近い。顧客のほとんどが100円という安さに驚きながら商品を購入していた。

■新規参入の脅威:ダイソーの仕入れ先は中国で、ダイソーが商品を購入しているような中国のメーカーを見つければ、比較的容易に真似できるビジネスモデル。そのため、ダイソーの後を追って新規参入する企業が現れた。

■代替品の脅威:ゼロに近い。世の中全体がいろいろな商品が100円で変えることに驚くばかりだったため。

2008年ごろ(100円ショップ成熟期)

■業界内の競争:過当競争になっている。

■売り手の交渉力:強まる。ダイソー以外の売り先が現れたことと、原油や金属の価格の高止まりで、売り手側が値上げ要請に走る。

■買い手の交渉力:強まる。リーマンショックによる不況で消費者が生活防衛に走る。

■新規参入の脅威:業界内の競争が過当競争のため、新規参入はない。

勃興期から成長期に移り変わる中で、100円ショップ業界を取り囲む「5つの力」のうち、買い手、売り手、業界内の競争の3つの力が高まり、業界全体の収益が圧迫されていくこととなります。

【環境変化を受けた100円ショップ各社の対応】

上記のような環境変化を受けて、100円ショップ各社はそれぞれ対応を取っています。業界トップのダイソーは海外へのシフトチェンジを図っていて、現在28か国に658店舗進出しています。また、業界2位のセリアがデザインや素材にこだわったPBを販売したり、業界4位のワッツは内容量を増やしたPBを販売したり、と各社特徴化を図っています。

日々の業務に追われるだけでなく、5F分析などによって自社の状況を把握し、戦略を変えていくことが生き残る上で重要だと言えそうです。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

PEST分析

本日はPEST分析に関して記載します。

【PEST分析とは】

自社を取り巻く環境分析をマクロ的な視点を持って分析する際に使用されるフレームワークにPEST分析というものがあります。これはPolitical(政治的要因)、Economical(経済的要因)、Social(社会的要因)、Technological(技術的要因)の4つの視点から見ていくものとなります。Politicalは法改正や規制などの政治的な要因となり、例えば飲酒運転の取り締まりと罰則強化により、地方の居酒屋業界がダメージを受けたり、駐車違反の取り締まり強化により、外食産業がダメージを受けたりということが挙げられます。Economicalは業種・業態によって同じ出来事でもプラスに働く場合もマイナスに働く場合もあります。例えば円高になれば輸出産業には海外での販売価格が上昇し不利に働きますが、輸入産業には購買力を高めることができ有利です。Socialは人口動態を見ておくことが必須となります。日本では少子高齢化です。最後にTechnologicalですが、これはPESTの中でも最も短期間かつ劇的な影響を競争環境に及ぼす可能性があります。インターネットの普及・カメラのデジタル化・スマホなどが日常生活の変化に与えた影響を考えると分かりやすいです。

【PEST分析のPoliticalな要因からドラッグストアを見ると】

環境変化はPEST分析によって知ることが出来ますが、最も早くから確実に変化を読めるものがPoliticalとなります。法改正には、まず改正を促すための社会的な変化や事件があり、それを受けて現状の法律についての検討が行われます。その後国会等に諮られた後、法改正が成立しますが、その施行までには一定の猶予が与えられます。

この事例として薬事法の改正によるドラッグストア業界の変遷に見られます。もともとドラッグストア業界が出現した要因は、以前の法改正により、薬の販売を行う際には薬剤師による対面販売が原則だったところ、顧客が自分で選んで買うことが出来るようになった結果、店舗の大型化が進んでいきました。そして2007年に改正され2009年に施行された薬事法の改正法は、今度は大型ドラッグストアにマイナスの影響を与えていきます。以前は大衆薬の販売にも最低1名の薬剤師の常駐が必要とされましたが、ある種の大衆薬の販売に際して薬剤師が不要となったためです。これによりスーパーにドラッグコーナーができるようになったのです。

マツモトキヨシ傘下で都内で約140店舗を展開する中堅ドラッグストア「ぱぱす」は、このような環境変化に対応するため、2011年春以降、集客を狙いとして青果を扱うようになっています。また、青果販売に加えて500円以下の低価格弁当を揃えるなどの食品販売を強化しました。弁当導入によりぱぱすの築地店では購入客数や売上高が2割増えたと言います。戦略としては「ロスリーダープライシング」と言われる、商品単品では赤字を出しても、他の高収益商品を併売させることによって収益を出すという価格戦略を採ったわけです(ドラッグストアの平均粗利率は35%。この高い粗利率を基に食品や日用品の特売を行い集客につなげる)。このような形でぱぱすは、薬事法の改正に伴うスーパーとの競合に対応したのです。

PEST分析は状況を近視眼的に自社の状況を見るのを避けるのに便利な手法と言えます。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

サンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”

本日はサンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”に関して記載します。

【サンシャイン水族館 リニューアルによる成果】

池袋にあるサンシャイン水族館は1978年に開業しました。子どものころに行って、ガーデンイールが面白くてすごく気に入った記憶が今でもあります。池袋駅からは少し歩くのですがサンシャインシティ内にありますので立地には恵まれています。しかしながら、一時は年間入場者数が70万人程度まで落ち込んでいました。そこでサンシャイン水族館は2011年8月にリニューアル。その結果、わずか5ヶ月で入場者数は120万人を突破し、2013年9月にはリニューアル後累計400万人を突破しました。リニューアルが成功したのです。

【サンシャイン水族館 リニューアル成功の要因】

サンシャイン水族館のリニューアルが成功した理由は「ターゲット顧客のチェンジ」と「新しいターゲットに的を絞った中核価値の再構築」にあります。

まず、サンシャイン水族館は“水族館の顧客=子ども、家族連れ”という意識を見直しまし、若者が集う池袋の土地柄やサンシャインの近隣にある施設の性格を見つつ、“大人”をターゲットにしていくこととします。リニューアル前のサンシャイン水族館の来場客数は、大人7割、子ども3割でしたが、リニューアル後は大人8割を目指していきます。中庭ではサンシャイン水族館ビールなどのアルコールが楽しめるカフェがあります。

そして、「天空のオアシス」を新しいコンセプトとし、来場者に珍しい海の生き物を見せるという考え方から、水そのものを見せることにより、癒しや安らぎといった価値を与えるという考え方にシフトチェンジ。サンシャインアクアリングという、観客が水を感じることが出来るよう、下から見上げ頭上いっぱいに水の広がりが感じられるような水槽を作っています。この水槽では、頭上でアシカやペンギンが泳ぐところが楽しめるのです。

【サンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”】

経営学者のコトラーは製品やサービスの価値を「中核」「実体」「付属機能」という3層に構造化して捉えました。それぞれを以下に記すと

中核価値:顧客がその製品やサービスで手に入れる、核となる便益。

実体価値:製品の特性を構成する要素。

付帯機能:中核価値に直接的な影響は及ぼさないけれども、その存在によって製品の魅力が高まること。

となります。

これを従来型の水族館とサンシャイン水族館に当てはめると、

中核価値:従来型水族館=海の生き物を見せる→サンシャイン水族館=水を見せる

実態価値:従来型水族館=海の生き物のための水槽→サンシャイン水族館=生き物を通じて水を感じる水槽

付帯機能:従来型水族館=子どものための館内アメニティー施設→サンシャイン水族館=大人がリラックスするためのアルコールも提供するカフェ

となります。

サンシャイン水族館と従来型の水族館の価値構造が異なるように、ターゲットとする顧客によってその内容が異なってきます。また、同じ製品やサービスを提供し続けていても、時間が経てば環境が変化するため、自社の価値が相対的に劣化する可能性もあります。

自社のターゲットとする顧客を明確に定め、社会・環境の変化を踏まえつつ、価値を作っていくことの重要性がサンシャイン水族館を通じて理解できます。

(参考文献 ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

空ナカ

本日は空港の商業施設“空ナカ”に関して記載します。

【空港ビル:売上高の大きいショッピングセンター】

空港へ行くと、ちょっと一休みできる飲食店もあればお土産を買うための店舗もあり、さながらショッピングセンターのようです。

空港にある商業施設の売上高も非常に大きなものとなっています。成田空港の商業部門の売上高は、全国のショッピングセンターの売上と比較し、2008~2010年度までトップを走っていました。2011年は東日本大震災の影響を受け外国人観光客が減少したために売上高は減少しましたが、それでも全国3位でした。関西空港の売上高も成田空港同様高く、関西エリアの主要ショッピングセンターと肩を並べる売上高を記録していると言います。

空港ビルは非常に売上高の大きい商業施設であるということが言えます。

羽田空港、成田空港、関西空港で商業店舗(物販店、飲食店、免税店)の賃貸や運営を行っている「日本空港ビルディング株式会社」は本来の事業は空港ビルの管理運営となりますが、実際のところは物品販売や飲食業で全体の約7割近くに達しています。同社が管理運営に留まらず商業店舗の賃貸・運営を行うということは、大きな空港の空港ビルを商業施設として活用することにはメリットがあるということだと思われます。

【空ナカの将来性】

空港の商業施設の売上を支えているのは海外からの旅行客となります。例えば中国人ツアー客は成田空港→東京→富士山→京都→大阪→関西空港という観光パターンが多いそうですが、最後の関西空港で土産物を買って国に帰ります。話は逸れますが、面白いことに中国人の関西空港の免税エリアでの隠れた売れ筋が1位:炊飯ジャー、2位:ミルク、3位:紙おむつとなっているそうです。最近、中国の日本製紙おむつ買い占めが話題となりましたが、空港の商業施設においてもその流れがあったということです。

2013年、訪日外国人旅行者が1000万人を超えましたが、政策的にその数を2030年に3000万人まで増やそうとしていますし、東京オリンピックもありますので、今後、空港の商業施設の売上高は増えていく可能性が高いと思います。空港ビルの商業施設の集客力に着目し、積極的に出店を行う企業も増えてきていると言います。今後、空ナカがどれだけ売上を拡大していくのか注目です。

(参考文献 立地ウォーズ)

駅ナカ立地の強み

本日は「駅ナカ立地の強み」に関して記載します。

【駅ナカの拡大とその背景】

近年、鉄道会社が駅ナカの開発に積極的になってきています。例えばJR東日本の設立した「株式会社JR東日本ステーションリテイリング」が開発運営する商業施設「ecute」は大宮駅や品川駅、日暮里駅などにあります。また、駅ナカは地下鉄構内にも広がりを見せています。東洋メトロは2012年4月現在で20~40店舗の大規模商業施設「Echika」を表参道と池袋に開業しています。

このように、鉄道会社が駅ナカの開発に積極的になってきている背景として、人口減少に伴う乗降客数の減少ということが挙げられます。中長期的に見て、鉄道会社は鉄道以外での収入源を模索する必要が出てきていて、それが駅ナカ開発へとつながってきています。

【駅ナカ立地 2つの強み】

駅ナカに商業施設を立地する1つ目の強みとしては、集客の高さに伴った売上の高さがあります。JR東日本の駅ナカ事業、駅のファッションビル「ルミネ」は床面積当たりのファッションの売上高は都心の百貨店並みと言われていて、その床効率の良さから、各アパレルメーカーが競って出店するようになってきています。

2つ目の強みとして、固定資産税が安いと言うことが挙げられます。都心部において駅ナカは人が多いので集客力があり、それに伴って高い売上が見込めるということは容易に想定できますが、この固定資産税に関した強みの部分は特に興味深いと思います。そもそも、駅ナカは固定資産税上の鉄道用地にあたる「鉄軌道用地」内であることを指し、改札の内側か外側かは問わないものとなっています。その「鉄軌道用地」は周辺の土地に対して1/3の価値で評価されていたと言います(2007年度課税分からは駅施設の店舗には宅地並みの課税が課されるようになりました)。また、地下鉄の駅に関しては、道路下の部分には固定資産税が課せられません。このことは地下鉄の駅ナカが、税が課せられない分、利益を出しやすいということが言えます。

駅ナカは気づくとあちこちにあるようになり、その小売のスタイルは定着してきているようにも思われます。駅ナカの拡大には鉄道会社の成長に向けた取り組みと鉄道用地の活用によるメリットの大きさがあるということが言えます。今後、人口が減少し乗降客数が将来的に減っていくことが想定される中、鉄道会社による駅ナカを中心とした駅の活性化が進んでいくのかもしれません。

(参考文献 立地ウォーズ)

置き菓子

本日は家賃の発生しない小売システム“置き菓子”に関して記載します。

【家賃の発生しない店舗】

つい最近、体調を崩し、薬を家の中で探していたところ、ちょうど富山の薬売りの薬箱から求めていた薬を発見。富山の薬売りと言えば、昔、家に薬を持ってきてくれる際に、子どもの自分に紙風船を渡してくれた記憶があります。富山の置き薬は、個人の家庭やオフィスに薬箱を無料で置かせてもらって、定期的に巡回して使用した薬の補充と代金の回収を行うビジネスモデルをとったものですが、薬箱はまさしく家賃の発生することのない小型店舗となります。

近年、同様の手法で置き菓子という手法があります。

【置き菓子 オフィスグリコ】

江崎グリコ株式会社が「オフィスグリコ」という、プラスチック製のボックスに菓子類を詰めてオフィスに置かせてもらうビジネスを展開しています。ボックスの中には10種類24個のお菓子が入っていて、値段は1個100円均一。仕事をしているとどうしても小腹がすくこともあるので、コンビニまでわざわざ行く必要がないので、従業員としてはメリットがあります。また、グリコとしても従業員という消費者のすぐ近くに家賃を発生させることなく店舗を構えることが出来るのでメリットがあります。

このビジネスは1999年2月に大阪に第1号販売センターが設置され2002年から本格的な展開を始めました。2012年現在でボックスの設置台数は12万台。その他にアイスと飲料を入れた冷蔵庫型の「アイスリフレッシュ・ボックス」というものもあり、こちらが1万台以上設置されています。一つのボックスにつき平均すると週で1000円程度の売上しかないものの、2011年の年間総売上は41億円にもなります。

グリコとしては、商品の補充や代金の回収を行うに当たり、巡回するスタッフが効率よくオフィスを巡回し、移動時間を短く人件費を圧縮できるかがポイントとなります。ですので、設置エリアはオフィスの密度が高い都心が中心となっているようです。一方で都心ではコンビニなどとの競合で売上高は比較的小さくなります。その分、郊外の場合はスタッフの移動距離は増えてしまうものの、オフィス周辺に競合が少ないことから売上が高くなる傾向があるようです。そのため、郊外のオフィスにボックスを設置してあっても、現状では利益が出ているようです。

オフィスグリコ以外にも、ロッテの「オアシスボックス」や森永乳業の「森永コンビニBOX」があります。このように他企業もこの市場に参入していることから、このビジネスモデルはメリットが大きいということだと思われます。一方で、千趣会の「ちょこたべBOX」は取り扱いを終了しています。このことから簡単に成功できるものでもないということも言えます。

(参考文献 立地ウォーズ)