本日はサンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”に関して記載します。
【サンシャイン水族館 リニューアルによる成果】
池袋にあるサンシャイン水族館は1978年に開業しました。子どものころに行って、ガーデンイールが面白くてすごく気に入った記憶が今でもあります。池袋駅からは少し歩くのですがサンシャインシティ内にありますので立地には恵まれています。しかしながら、一時は年間入場者数が70万人程度まで落ち込んでいました。そこでサンシャイン水族館は2011年8月にリニューアル。その結果、わずか5ヶ月で入場者数は120万人を突破し、2013年9月にはリニューアル後累計400万人を突破しました。リニューアルが成功したのです。
【サンシャイン水族館 リニューアル成功の要因】
サンシャイン水族館のリニューアルが成功した理由は「ターゲット顧客のチェンジ」と「新しいターゲットに的を絞った中核価値の再構築」にあります。
まず、サンシャイン水族館は“水族館の顧客=子ども、家族連れ”という意識を見直しまし、若者が集う池袋の土地柄やサンシャインの近隣にある施設の性格を見つつ、“大人”をターゲットにしていくこととします。リニューアル前のサンシャイン水族館の来場客数は、大人7割、子ども3割でしたが、リニューアル後は大人8割を目指していきます。中庭ではサンシャイン水族館ビールなどのアルコールが楽しめるカフェがあります。
そして、「天空のオアシス」を新しいコンセプトとし、来場者に珍しい海の生き物を見せるという考え方から、水そのものを見せることにより、癒しや安らぎといった価値を与えるという考え方にシフトチェンジ。サンシャインアクアリングという、観客が水を感じることが出来るよう、下から見上げ頭上いっぱいに水の広がりが感じられるような水槽を作っています。この水槽では、頭上でアシカやペンギンが泳ぐところが楽しめるのです。
【サンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”】
経営学者のコトラーは製品やサービスの価値を「中核」「実体」「付属機能」という3層に構造化して捉えました。それぞれを以下に記すと
中核価値:顧客がその製品やサービスで手に入れる、核となる便益。
実体価値:製品の特性を構成する要素。
付帯機能:中核価値に直接的な影響は及ぼさないけれども、その存在によって製品の魅力が高まること。
となります。
これを従来型の水族館とサンシャイン水族館に当てはめると、
中核価値:従来型水族館=海の生き物を見せる→サンシャイン水族館=水を見せる
実態価値:従来型水族館=海の生き物のための水槽→サンシャイン水族館=生き物を通じて水を感じる水槽
付帯機能:従来型水族館=子どものための館内アメニティー施設→サンシャイン水族館=大人がリラックスするためのアルコールも提供するカフェ
となります。
サンシャイン水族館と従来型の水族館の価値構造が異なるように、ターゲットとする顧客によってその内容が異なってきます。また、同じ製品やサービスを提供し続けていても、時間が経てば環境が変化するため、自社の価値が相対的に劣化する可能性もあります。
自社のターゲットとする顧客を明確に定め、社会・環境の変化を踏まえつつ、価値を作っていくことの重要性がサンシャイン水族館を通じて理解できます。
(参考文献 ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)