マクドナルドの日本オープンに関して

本日はマクドナルド、日本オープン時の話について記載します。

【1971年 銀座三越にマクドナルド1号店オープン】

日本で最初にマクドナルドのフランチャイズを運営した藤田田はもともと輸入業を営んでいました。輸入していた内容は女性用のアクセサリー等でしたが、輸入業を営む中で、藤田はマクドナルド社が国際化に関心を持っていることを知ります。当時、マクドナルド社の基本的な方針は、個人に限り1店舗のみフランチャイズ権を認めるものでしたが、藤田はマクドナルド社に対して“日本で複数のフランチャイズ店を出店すること”と“店舗運営において自由裁量権を認めること”を説得します。

また、マクドナルド社のアナリストがアメリカでの成功例を挙げ、日本でも郊外に出店することをすすめていましたが、藤田はそのアドバイスには従わず、銀座三越にオープンすることにします。銀座三越は藤田が取り扱っていた女性用のアクセサリーを購入していた顧客であったことから、そのコネが利用できたのです。

銀座三越での店舗スペースは通常のマクドナルドの1/5でしたが、藤田はキッチンをコンパクトに設定し、座席の代わりにカウンターを用意しました。その様な店舗スペースになった理由は、三越が顧客に不便さを感じさせるような、店の改装を望まなかったためです。

三越の定休日は月曜日なので、藤田は日曜日の午後6時から火曜日の午前9時までという、39時間の間に店舗の改装をしなければなりませんでした(通常のマクドナルドの店舗の建築には3ヶ月かかる)。このミッションをクリアするために、藤田は東京郊外にある倉庫で、作業員たちに39時間以内で店舗を組み立てられることができるようにするため、練習をさせます。これにより短時間での店舗建設に成功。そして、銀座三越のマクドナルド1号店の売上も上々で、開店から1ヶ月で4000万円の売上を上げ、開店時の開店費用の3000万円を回収することができました。

藤田は第1号店をオープンした3日後、新宿に次の店をオープン。更にその翌日に第3号店をオープン。全ての店舗が大成功を収め、18か月後には日本全国に19店舗のマクドナルドを持つこととなります。

【マクドナルド 多様な国にランダムに拡張するフランチャイズ】

当時、マクドナルド社は日本への店舗展開には興味がなかったと言います。藤田田がマクドナルド社を説得したことで、日本への参入が決定したのです。

マクドナルドはフランチャイズを採用しているわけですが、そもそも、フランチャイズとは“ある企業名の下でビジネスを遂行する権利”のことを言います。そしてフランチャイズには「ダイレクト」と「マスター」2つの類型があり、ダイレクト・フランチャイズは個別店舗のオーナーに与えられるもので、マスター・フランチャイズは、フランチャイズ権が与えられた個人が特定の地域や国で一括して店舗展開が行える権利を持つという制度となります。藤田田は後者の方となるわけです。

マスター・フランチャイザーにとっては、どの国に参入するのが最善であるのかを見分けるよりも、藤田田のような、フランチャイズのネットワークを拡大できる人物を識別することの方が重要となります。ですので、マスター・フランチャイザーでの拡張パターンは、文化的に近い国から順次参入していくというものではなく、多様な国へランダムに拡張していくパターンとなるのです。

【消費者に受け入れてもらうための日本流アレンジとマクドナルド参入による消費スタイルの変化】

藤田田はファストフードというコンセプトを最も受け入れやすい層は若者だと確信し、広告の焦点を子どもと若い家族に向けて絞り込みました。藤田は「日本の年配世代の食習慣はとても保守的である。しかし、子ども達には、ハンバーガーは美味しいものだと学習させることができると思った」と語っています。

また、藤田は日本マクドナルドの成功に向け、マーケティング戦略に自分なりの修正を加えました。例えば、「McDonald」という名前が日本人には発音しにくいと考えて「マクドナルド」に変え、シンボルの「Ronald McDonald」も「ドナルド・マクドナルド」とアレンジしました。このように、日本の消費者が適応するように、マクドナルド社のものをそのまま使用するのではなく、修正を加えたのです。

マクドナルドの日本参入は日本人の消費スタイルを変えていくことともなりました。従来までは弁当を購入していた日本の若者が、ファストフードを選ぶようになっていったのです。

海外から企業が市場へ参入してきた際、その国の消費スタイルに合わずに撤退していくこともあれば、その国の消費スタイルが変化していくことがあります。マクドナルドは後者だということが言えます。

マクドナルド1号店が銀座三越ということを知らなかったので、「百貨店にファストフード」という、そのギャップには驚きました。

(参考文献 変わる世界の小売業)

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