【韓国経済に影響力を持つ財閥】
韓国経済においては家族経営で支配される巨大企業集団である財閥が大きな力を持っており、1960年代初期から政府の特別な支援を受けて成長を続けてきました。例えば現代(ヒュンダイ)、三星(サムスン)、LG、SK、韓進、ロッテ、大宇といった財閥があります。また、この財閥の特徴として、参加にいろいろな産業にまたがる子会社を持っています。例えば、自動車で有名な現代であれば、建築・重工業・生命保険で子会社を持っており、小売業では現代百貨店を所有しています。またサムスンはサムスン電子だけでなく、三星生命・三星重工業・三星建設などを傘下に所有していて、小売業においてはイギリスのテスコと合弁でホーム・プラスというディスカウントストアを経営しています。財閥の中でロッテ・グループは特に小売業に強く、ロッテ百貨店、ロッテ・マート(ディスカウントストア)を所有。LGはコンビニのLG25やLGスーパーマーケットを所有しています。韓国経済を理解しようとした際、この財閥の存在が大きなポイントとなってきます。
【製造業の強い韓国における小売業の形態】
韓国は自然資源をほとんど所有しないため、1960年代から輸出部門を支援し製造業の成長を促してきました。一方、小売業に関しては特に国が支援することはせず、1996年に小売市場を完全自由化するまで国際競争からも保護していました。
上記のような流れの中で、韓国の過去からの経緯で、川上である製造業の力が強かったこともあり、委託販売システムや製造業者直営の販売代理店(フランチャイズ)への集中などの特徴を有するようになりました。小売業者ではなく製造業者が、品揃えの決定、販売員の派遣、委託システム下での商品展示、売れ残り商品の処分などの機能を果たしていたのです。韓国の百貨店やディスカウントストアが力をつけた今でも委託販売システムやフランチャイズ店の仕組みは、韓国小売業を理解する上で大きなポイントとなっていると言います。
【上位集中と小規模店舗】
韓国の小売市場は有力企業による集中度が高くなっていて、そのほとんどが財閥グループです。韓国の百貨店業界の上位3社を見ると、ロッテ百貨店、新世界百貨店(元三越→三星)、現代百貨店となっています。またディスカウントストアにおいてもイー・マート(新世界、三星の子会社)、ホーム・プラス(三星とテスコの合弁)、ロッテ・マートと上位3社が財閥系となっています。
その一方で家族経営のパパママ・ストアの割合が非常に高いということも特徴のようです。2000年度の小売店舗数だと、694,000店あり、人口1000人当たり15.1軒の小売店があることになります。日本が13.2、アメリカが6.1、イギリスが1.9、ドイツが1.9という数値になっていますので、小売店が過密していることが伺えます。
韓国の小売業は財閥の影響を大きく受ける一方で、小さな小売店の数も多いということが言えます。製造業の力が強く、委託販売や製造業者直営の販売代理店の仕組みがあることは日本の小売業に近しいところもあるように感じます。
(参考文献 変わる世界の小売業)