本日はセブン‐イレブンの小売事業システムに関して記載します。
セブン‐イレブンはファーストフードや惣菜に強い日本型のコンビニを生み出しましたが、それを支えるシステム面においても革新的な取り組みを行ってきました。そのシステムを以下3つの視点で見てみます。
【組織設計】
セブン‐イレブンのフランチャイズ組織の柱となったものとして“粗利益分配システム”があります。フランチャイズチェーンにおいて、本部が加盟店から徴収するロイヤルティ(看板料や経営指導料の総称)の設定方法として、売上げ歩合方式が一般的でした。この方式は、加盟店にたとえ利益が出ていなかったとしても、売上高に応じたロイヤルティを本部に支払う必要のあるものです。それに対して粗利益分配方式は、加盟店の粗利益額に応じてロイヤルティを設定する方式です。この仕組みだと、本部も自社の収益を増やすためには、店の利益を増やす必要があり、本部と加盟店が同じ目標に向けて協業するという関係が成立しやすくなります。本部は各店の売上高や仕入れ状況などを把握することによって、加盟店に対して様々な経営指導や販促協力を行い、加盟店は地域情報に根ざしたきめの細かい在庫管理を行うという、共栄共存の関係が構築されていったのです。
【情報システム】
コンビニという狭い売場面積で生産性を最大限高めていくには、商品回転率を高める「単品管理」による廃棄ロス・機会ロスの最小化を図ることが必要で、そのために同社は常に情報システムに対して積極的に投資を行ってきました。単品管理とは、これ以上細分化できない単位で商品の販売動向を把握し、在庫管理を行っていくことで、POSレジの普及とともに実行が用意となってきました。単品管理は単品ベースの販売動向分析に基づき、それぞれの店舗に適切な在庫の補充を行うための商品発注と、商品の取り扱いの有無を決定する品揃えが中心的な課業となります。同社は単品管理には大規模な情報システムの構築が必要だと考え、1982年に全店にPOSレジを導入(ローソンが90年7月、ファミリーマートが90年6月に同システムを導入)。死に筋の排除と売れ筋となる可能性のある新製品の投入を徹底的に進めるとともに、欠品による機会ロスの減少により、業績を急速に改善させていきます。90年には検品スキャナーST(スキャナー・ターミナル)を導入。店に納品される商品をSTでスキャンし、検品作業を簡素化かつ精度も向上させます。そして、91年にはISDN回線、97年からは衛星回線、06年からは光ファイバー通信網の整備、と同社の情報システムの強化を図ってきました。
【物流システム】
セブン‐イレブン誕生当時の小売業界では、卸からメーカーケース単位で店舗に納品されるのが普通でしたが、そのような物流をそのまま店舗面積の小さいコンビニに持ち込むと、店のバックヤードがすぐに在庫であふれ、店頭は過剰在庫の状態に陥りやすくなってしまいます。コンビニには、納品頻度が高く、納品単位が小さく、精度の高い物流サービスが必要でした。同社は1976年に物流改革プロジェクトを立ち上げ、3つのことに取り組みます。まず、一つ目は一定の配送地域にまとまった数の店舗を設け(ドミナント戦略)、配送量を拡大するということです。そして、二つ目は各店に商品を供給するベンダー(製品の供給業者)数を集約し、ベンダー1社当たりの配送規模を拡大するということです。食品から雑貨まで幅広いカテゴリーの商品を品揃えするコンビニは、小さな店舗であるにも関わらず、取引先が多くなっていました。そこで、作業効率のためにベンダーを絞り込む必要がありました。最後に3つ目は、複数メーカーの商品をトラックに混載する共同配送を採用することです。これにより配送及び店内の荷受け作業の合理化を図りました。
セブン‐イレブンは慣習に囚われずに業務改善を進めてきたことによって、力強い同社の仕組みを作ってきたように思われます。時代が変わってもそのことは重要なのでしょう。
(参考文献 日本の優秀小売企業の底力)