本日はヨークベニマルの従業員全員参加型の店舗運営に関して記載します。
ヨークベニマルは福島県郡山市に本部を構える企業で、セブン&アイ・ホールディングスの食品スーパー事業の中核企業です(2006年9月に完全子会社化しました)。ヨークベニマルは1990年代半ばから大店法が大幅に緩和され、ジャスコやマイカルが東北地方への大型ショッピングセンターの出店を加速するなどにより、競合環境が激化してきたことに対し危機感を募らせ、総合スーパーを目指していた方向性から、食品スーパー事業へ経営資源を集中させていきました。そして経営の効率化を図るべくドミナント戦略を徹底していきます。
食料品スーパーの売上高は、時間経過に伴う品質劣化の大きい、青果、鮮魚、精肉の生鮮食品で約3割占め、それに惣菜を加えると4割を占めます。また、パンや豆腐と言った、原則入荷同日に売り切ることが必要な日配品の売上高は約2割となっています(「スーパーマーケット販売統計調査(2011年1月実績確報版)」より)。これら生鮮3品、惣菜、日配品といった商品は、迅速に需給調整を行う必要があります。ですので、販売動向や天候、競合店の状況を見ながら、売場づくりを行い、鮮度の良い商品を提供し、かつ値下げロスや廃棄ロスを少なくしていくことが求められます。
その様な前提がある中で、ヨークベニマルはパートタイマーも加わった全員参加型の店舗運営を行っています。食品スーパーは1日の中でも時間帯によって、朝は年配者、昼は主婦層、夕方は独身者、といったように客層が異なり、時間帯によって売場を変える必要がありますし、天候の変化や商品の売上が伸びない場合は店内広告を行ったり、陳列方法を変えたり、値下げを行ったりしていかなければなりません。そのためにはパートタイマーの協力が不可欠となってくるのです。ヨークベニマルはパートタイマー比率が同業他社の64.6%に対し、84.7%とその割合が大きくなっています。よってパートタイマーも含めた全員参加型の店舗運営が非常に重要なポイントとなります。そのため、人事制度による目標設定によってモチベーションが上がるように工夫を凝らしているようです。
また、興味深い取り組みとして同社の単品管理に関する取り組みがあります。従来、全員一律の基準を単品管理に設定し運用していましたが、その際、社員やパートタイマーの退職者が増えたそうです。原因は自分の裁量でやれなければ面白くないという点にあったようなのですが、そこから同社は、各人が前向きに取り組んだ単品管理では、それがたとえ失敗しても容認し、従業員が単品管理に自主的に取り組む姿勢を植え付けていこうとしたそうです。
ヨークベニマルはパートタイマーがチームを組み、職場の改善運動も行っています。単品管理やチームを組み改善活動を行うことを通じて、従業員が日々の仕事の意味を理解し、仕事を工夫する面白さを経験することで、日常の業務を主体的に取り組めるように組織の体制を整えているのです。各従業員が主体的に仕事に取り組める環境を作ることは、組織の活力につながります。それを達成するために経営の方向性と取り組み内容が一つの鍵になると言えそうです。
(参考文献:日本の優秀小売企業の底力)