本日は商店街の活性化を阻害する要因に関して記載します。
商店街に来店客を増やし、自らの店舗の売上を拡大するために、商店街が組合を組織して事業を行い、商店街の活性化を目指すわけですが、活性化の成果が必ずしも個人商店の業績にいい影響を与えるとは限らないといいます。行政からの補助金と自らの資金と労力を投入し活性化を図っているにも関わらず、自店舗の業績が改善するどころか、既存顧客を失い、業績が悪化することがあると言います。
そのような中、まず商店街の活性化に成功している事例を見てみます。
【商店街活性化成功の事例】
(1)近隣型商店街や一部の地域商店街が観光地として再生した事例
・小江戸のイメージで街並みを整備した埼玉県川越市
・「黒壁」と呼ばれる銀行の建物を保存しガラス館として活用した滋賀県長浜市の商店街
・昭和の町として定着している大分県豊後高田市の商店街”
(2)高齢化社会を踏まえ、高齢者をターゲットとした商店街づくり
・「おばあちゃんの原宿」で知られる東京都豊島区の巣鴨地蔵通り商店街
これらの成功事例の一方で以下のような弊害もあります。
【上記の活性化に伴って生じる弊害】
(1)日常の生活で売れる商品と、観光客に売れる商品は違う
・商店街が観光地化した場合、積極的に観光客向けに商売を転換した店は生き残れますが、旧来通りの商売を続ける店は商売に行き詰ります。つまり地元向けの商売を続けたい店舗にとっては、商店街の観光地化はデメリットにつながるのです。
(2)若い人を対象としてきた商店は商売を続けることができなくなる
・もともと高齢者向け商品を扱っている店や高齢者向けの商品にシフトする店は問題ないのですが、若い人を対象にしていた場合は商売の継続が難しくなります。
商店街の変化の方向性が、自分のやりたい商売の方向性とズレが発生してしまった場合、その商店街での商売を放棄しなければならなくなります。商店街の活性化は、活性化の方向性にあった一部の店舗にしかメリットを生み出しません。そのため、多くの店に共通してメリットをもたらそうとすると、基本的な環境はそのままで、今より少しだけ来客が増える程度の、無難な活性化策が選ばれることになるのです。
上記に加え、商店街の活性化に伴う、店舗の賃料の上昇というリスクも存在します。商店街が過度に活性化すれば、そのエリアの資産価値が上がり、店舗の賃料が上がり、商売をする側からすると経費の増につながるわけです。
以上のようなことから、商店街の抜本的な活性化につながるような動きが出にくいということがあるようです。商店街が衰退していくのは近隣の大型SCの影響であったり、商店街側のやる気の問題であったりと言われることもありますが、実際のところ、商店街の活性化に向けたハードルというのは、外側から見ている以上に難しいものがあるのかもしれません。
(参考文献 なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか)