本日は無印良品のスマホアプリを活用したCRM施策に関して記載します。
以前、良品計画は会員カードを導入しポイントが付与することは実質的な割引となると考えていました。そのため会員カードを導入しておらず、良品計画は本格的なCRM施策に踏み切れずにいました。しかしながら、消費増税に伴い消費意欲の減退が想定される中で、CRMの不在が喫緊の課題となってきました。CRMは、会員カードを通じたデータベースなどを用いて各顧客の詳細な属性情報や購買履歴、問い合わせやクレームの内容などを記録・管理し、問い合わせに速やかに対応したり、その顧客に合った商品を紹介したり、という活動のことを指します。消費増税後を見据え、価格優位性がない無印良品にはCRMの取り組みにより顧客との関係性を強固にすることが必要だと考えられるようになってきたのです。
そして2013年5月15日に良品計画はスマートフォン向けアプリ「MUJI passport」をリリースしました。MUJI passportはアプリ化された会員カードで、アプリ提供開始から約3週間でダウンロード数が35万件を超えたと言います。このアプリを立ち上げると画面の下部にバーコードが表示され、そのバーコードを利用者が店舗で買物をするときに提示し、店員に読み取ってもらうことで、購入金額に応じて「MUJIマイル」が貯まります。
また、アプリを使って利用者が様々な情報を紐付けするとマイルが貯まりやすくなるようにしています。例えばMUJI.netメンバーの情報をアプリに登録すれば、通販サイトで購入した時に取得したマイルと合算できますし、MUJI passportにFacebookやTwitterといったソーシャルメディアのアカウントを登録することによってもマイルが貯まります。また、良品計画が発行するクレジットカード「MUJI Card」のカード番号を登録すれば、優良顧客と判断されて、よりお得なクーポンなどがもらえるようにもなっているそうです。良品計画では、このようにオンラインとオフラインの購買行動、クレジットカード会員情報、ソーシャルメディアアカウントをMUJI passportというプラットホーム上ですべてつなぎ合わせ、顧客の利用動向を一貫して把握するようにしていくようです。
この会員カードをアプリしにて、そこをハブとして様々な情報を結び付けてこうとする発想が面白いと思いますし、わざわざ会員カードを持ち歩かなくてもいいので、利用者にとっても便利なものだと思います。良品計画はこの会員カードアプリを活用し、顧客データを分析することでアンバサダーを発見できる可能性もあると考え、同社の根強い顧客による口コミ効果につなげていくことも考えているようです。アプリの提供開始直後、利用者の購買単価が全体平均の2倍になったという結果も出ているようです。良品計画の会員カードのアプリ化は今後のCRMの方向性の一つとしての試金石であるような気もします。
(参考文献 最新マーケティングの教科書)