本日はマーケティング3.0、オフィシャルでない活動を通じてブランディングに成功した「永谷園生姜部」に関して記載します。
永谷園はお茶漬け海苔や即席みそ汁のあさげなどの商品が有名ですが、健康を切り口とした生姜の商品でも有名です。永谷園は多くの女性が世代を問わず抱える冷えの悩みを和らげるために、体を温めると言われてきた生姜を使った“「冷え知らず」さんの生姜シリーズ”を2007年6月に販売したところ、初年度の売上が約4億円と予想外の大ヒットとなりました。そのことを契機に同社は生姜の可能性に着目します。生姜は昔から多くの長所があると言われてきましたが、その特徴や効用などは解明されていないことが社内で判明します。そこで生姜が持つ可能性に着目し、社員が知識を深め、その特徴を活かした商品を開発するために「生姜部」という組織を発足させます。この生姜部の特徴としては、趣味のクラブ活動的位置づけとして社内で始まった正式な部門ではないということです。集まっている人々は部門や年齢、役職も様々なようです。ネットで見ると2013年11月現在では広報部や情報システム部、研究部等、入社34年の人もいれば2012年入社の人もいると幅広い人々が生姜部に参加しています。
生姜部の具体的な活動としては、生姜を知るためには生姜を育てることが必要だと千葉に1500平方メートルの畑を借り、2008年5月から有機栽培を開始。2008年9月には同社の生姜関連商品と生姜に関するレシピ情報などを提供するサイト「永谷園生姜部」を開設。そこではYouTubeやブログなどを活用して生姜に関する情報を提供。生姜を使った動画つき料理レシピの紹介を行ったり、生姜の歌も聞けたりもします。さらに過去には同社は生姜部に社外から部員を公募。社内生姜部員とともに、生姜の収穫、商品開発、レシピムービーへの出演といった活動を行ったようです。
永谷園生姜部の活動を通じ、“「冷え知らず」さんの生姜シリーズ”はカップ入りスープから箱入りスープ、生姜カレー、生姜はちみつのど飴などに商品ラインを拡張。さらに、他社とのコラボレーション・タイアップ商品として、サントリーの生姜リキュールなどが誕生しています。販路もコンビニからすべての小売業チャネルに拡大しました。
永谷園はオフィシャルでない生姜部の活動を通じて社内外の人々と共創しながら、世の中に生姜を注目させ、生姜の可能性を引き出した商品を作り、新市場の創造に成功したのです。「興味を持って自発的に動く組織」「部門の垣根を越えたセクショナリズムのない組織」「顧客の参加による共創」といったことが生姜部の活動を通じてできたからこそ、永谷園がそれまで持っていなかった生姜という新たな切り口ブランディングができたのだと感じます。
(参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)