IKEAのリポジショニング

本日はIKEAのリポジショニングに関して記載します。

IKEAは言わずと知れた、各種家具やインテリア小物、照明などを販売している企業ですが、その売りはデザインの良さということに加え、その低価格路線が強みとなっています。埼玉県の新三郷にあるIKEAに行ってみたのですが、店舗内はワンウェイ・コントロール(顧客の店舗滞留時間を長くするためのレイアウト戦略)が徹底され買い回りを促すようなものとなっていました。そのためか店舗内に休憩所的な位置づけと思われるレストランがあり、その価格を見てみると、例えばカレーライス249円とかなり安めで価格設定がされていました。これは一例ですが、メインの家具もレストラン同様に安めに価格設定されていました。IKEAは1974年に船橋に日本に初上陸しましたが、1986年に撤退。そして、2006年に再上陸した企業です。再上陸の際、1回目の上陸と異なる部分の一つに、この価格面があると言います。

 日本のインテリア市場は“デザインを重視せず実用面に力を入れた低価格商品”か“こだわりある高額品”と二極化していました。そこでIKEAは「インテリアや家具のデザインにはこだわるが、価格は安さを求める」という人たちを対象に日本に上陸しました。IKEAは市場における自社と自社商品の位置付を見直し(リポジショニング)、「出費を抑えるためなら、多少の手間をいとわない人たち」を対象に、ローコスト・オペレーション経営を実施し、成功をしているのです。IKEAの商品はすべて組み立て式によるシンプルな北欧デザイン家具に統一されています。家具の開梱設置を店側が行うのではなく、顧客が自分で家具の組み立てを行うことになります。また、店舗には広大な駐車場が完備され、顧客が商品を持ち帰ることで、配送コストも削減しています。商品の製造方法に関しても、競争入札ではなく、取引先を絞り込み、長期契約を結ぶことによって、まとまった量の生産を行い、コストダウンにつなげているのです。

IKEAの2012年8月期の日本国内販売額は674億円で国内大手の大塚家具(545億円 同12月期)を抜きました。北欧デザインのおしゃれさを売りにしただけであったり、低価格路線だけであったりした場合、このようにはいかなかったかもしれません。同社が市場における自社のポジションを“低価格かつデザインの良さ”と設定したことが成功につながっているように思います。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)