富士フイルムが生み出した化粧品の戦略

本日は富士フイルムが生み出した化粧品の戦略に関して記載します。

2012年1月に、銀塩写真(アナログ写真)メーカーとして有名であった、アメリカのコダックが経営破綻をしました。銀塩写真フィルムはかつては、アメリカのコダック、ドイツのアグファ、日本の富士フイルム、コニカの4社しか作ることができなかったため、高い収益を誇る寡占市場となっていました。ところが1990年代半ばからデジタル写真が普及。銀塩式写真フィルムは急速に市場シェアを奪われていくこととなりました。

その状況下、富士フイルムにおいても、2000年時点で写真フィルムの売上高が2600億円を超える規模を誇っていたものの、デジタルカメラの普及とともに、その売上を毎年200億円のペースで減少させてしまうという事態に陥りました。そこで同社は自社技術の棚卸を行い、事業の多角化を行いました。

 同社は、写真を美しく表現するため、独自の技術を培っていました。写真フィルムの半分はコラーゲンでできていて、発光のための粒子や光を感じる粒子などが含まれた多数の層からできています。そして人の肌の構造も、真皮にコラーゲンを含み、様々な機能の異なる細胞でできています。その点に富士フイルムは着目し、女性用化粧品の開発に乗り出し、「アスタリスト」を産み出します(この化粧品はコエンザイムQ10の約1000倍の力を持つ植物由来の天然成分「アスタキサンチン」を配合。3種類のコラーゲンも入っているそうです。)

この「アスタリスト」を売り出すにあたってのブランド戦略としては、数多くある化粧品会社の中で、新ブランドを立ち上げて知名度と認知度を高め、ブランド価値を向上させるのは容易ではないという理由から「富士フイルム」という企業ブランドを打ち出していきます。多くの場合、企業が新規事業に着手し新商品を市場に投入する場合、企業名を敢えて表に出さず、事業ブランド名や個別ブランド名を打ち出していきます。しかしながら、富士フイルムの場合は同社名を打ち出すことで、生活者に信用と信頼を感じてもらうことを主眼としたようです。

 新技術や新商品の登場で市場の構造が変化し、自社の販売している商品の市場が縮小、消失していく時は、早急に新たな市場を見つけ、新商品を投入するなどを行い、新市場での地位を確立し、新たな売上と利益を確保していくという必要があります。何事も固執しすぎることはマイナスに働くようです。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)